謎だった人物

メルマガ(本日送信分)にもちょろっと記したけれど、しばらく前からアーバノのピエトロの『調停の書』(Conciliator)を断片的に読んでいて、割と頻出する名前の一つにHaly.というのがあって、人名らしいことはわかるのだけれど、何の略だろうとずっと思っていた。で、ついこの間のこと。先に取り上げたM.フランプトン『意志の具現化』の中世盛期の章を読んでいたら、ちゃんと出てきた。こういうのが見つかると、なんだか嬉しい(笑)。10世紀ごろのペルシアの自然学者で、ラテン名でハリ・アッバス(Haly Abbas)という人物。Alî ibn al-‘ Abbâs al-Madjûsîというのがもとの名前。ガレノス医学の概説書(『医療技術大全』または『王の書』)を残しているといい、これをコンスタンティヌス・アフリカヌス(11世紀)が部分的にラテン語に訳出したものが、サレルノ医学の基礎の一つとなった『パンテグニ』(Pantegni)なのだそうで。アラブ世界でもアヴィセンナの『医学典範』が出るまで、その『王の書』がスタンダードな医学教科書だったという。うん、サレルノやパドヴァの医学についてはもっといろいろ知りたいところ。