舞台上演版「メサイア」

なんとも大胆な企画だ。ヘンデルのオラトリオ『メサイア』を、オペラ風の舞台上演に仕立ててしまうとは!そのDVDがこちら。ヘンデル/Messiah: Guth Spinosi / Ensemble Matheus Gritton Horak B.mehta Croft Boesch。2009年の案・デア・ウィーン劇場での公演。キリストの生涯をそのまま描くのではなく、ここではその説話に埋め込まれた情感を、一人のサラリーマン風の男性の苦悩と自殺、そしてそれを受け止めなくてはならない親族たちの苦しみとして、いわば「抽出」して描き出している。一種の換骨奪胎なのだけれど、これが結構上手くいっているように感じられる。なかなかに劇的な構成。回り舞台は次々に様々な場面を見せていき、また、主人公の分身のような無言の女性ダンサー(唖という設定?)が、不特定の人々を表すかのような合唱団と相まって全体を見事に引き締める。うーん、見事。演出はクラウス・グート。あー、アーノンクールの指揮だった2006年のザルツブルク音楽祭の『フィガロの結婚』とかの演出を手がけた人ね。なるほど〜。で、音楽自体も全体に抑えの利いたとても美しい演奏で、とても冴えている印象。オラトリオで聴くのとはまた違って、舞台の陰影とともに深みが増すような効果もあるのかしら。指揮はジャン=クリストフ・スピノージ。アンサンブル・マテウスとアーノルド・シェーンベルク合唱団。スピノージ&アンサンブル・マテウスはnaïveのヴィヴァルディ・エディションとかでオペラものを出しているっすね。