前政権への反省?

このところ、立て続けに昨年後半公開の米国映画の話題作をレンタルDVDで観た。で、どれもがなんだか共和党の前政権に対する反省というか再考というかを表しているようで、そのある種の執拗さに思わず苦笑してしまうほど。まずバットマンの新シリーズ『ダークナイト』(監督:クリストファー・ノーラン)。前シリーズのニコルソンのジョーカーは、ぶっちゃけた話おちゃらけだったけれど、今回のヒース・レジャーのジョーカーは真に鬼気迫るド迫力。それはともかく、作品内容として「正義」についての再考を迫り、しかもそのダークサイドを見据えた末に肯定しようとしているあたりで、なんだかこれ、共和党政権がその戦争的禍根をあえて肯定しようとしているかのような悪夢になっている……のでは?次がナイト・シャマランの『ハプニング』。これはいわばゾンビの出ないゾンビ映画(笑)。「ゾンビが出ない」という部分でまったくの失敗作だと思うけれどね(同じ監督の『サイン』は、ゆらゆら揺れる宇宙人が出てきて、それはそれで脱力したんだっけ(笑))。これもまた「敵がいるはずだけれど、見えてこない」という、米国が一時期共有していた焦燥感みたいなものを表している……のだろうなあ、きっと。そういう意味では、これまた前政権時代への批判という感じではある。極めつけは『告発のとき』(監督:ポール・ハギス)。これはもろイラク戦争がらみ。あまりにストレートすぎるのだけれど、息子の事件を追う元軍警察の親父(トミー・リー・ジョーンズが渋い)による話になっていて、謎解きの面で話に引き込まれる。でも、事件の真相そのものはともかく、背景に描き込まれたイラク問題が痛々しい。それにしても娯楽作でありながらも、社会情勢が色濃く反映しているのが最近の米国のヒット作という印象。最近の経済危機なども、これからの公開作に描き込まれていくのだろうなあ。イーストウッドの最新作『グラン・トリノ』あたりは、ポーランド移民で元自動車工だった親父(イーストウッド)が主人公なのだそうなので、もしかするとすでにしてそんな感じかもしれない(笑)。主題歌はイーストウッドとその息子(って、『センチメンタル・アドベンチャー』の彼?)が作詞作曲なのだそうで(ref:映画評論の町山智浩氏のブログ)。そういえばちょうどイーストウッドにカンヌの特別賞が贈られたそうで(拍手)。