17、18世紀の思想的風景も

サロンの思想史―デカルトから啓蒙思想へ中世思想史がメインの本ブログも、最近は筆者の個人的な関心の振れ幅に合わせて、前後・左右(?)へも鋭意拡張中(笑)といったところ。この拡張路線でも、思想史的ポイントというのはいろいろあることが改めて感じられ、それらも、できれば中世からの史的展開の流れに照らしつつ見ていきたいと思っている。とまあ、そんな中、思うところあって手にしてみたのが、赤木昭三・赤木富美子『サロンの思想史―デカルトから啓蒙思想へ』(名古屋大学出版会、2003)。17、18世紀のサロンでどのような思想が語られていたかを詳述しようという一冊のようだが、冒頭の第一章がその時代の思想史を俯瞰的に捉えていて、見取り図として役立ちそうな案配だ。たとえば17世紀前半からのガッサンディらによる懐疑主義の動き。その広がりはずいぶんと広範だったことが改めてわかる。エピクロス思想とともにリベルタンたちの間で広まり、デカルト全盛の17世紀後半にあっても命脈を保ち、ときには幾人かの過激な論者をも生んでいき、18世紀にまで受け継がれていくとされる。で、それを支えたのがいわゆる地下出版で、これは17世紀末ごろから盛んに。とりわけ架空のユートピア旅行記などの体裁で検閲を逃れた宗教批判などが活況を呈したという。地下出版にはもちろん論述もあり、『ジョルダーノ・ブルーノ復活』三部作(逸名著者)なんてのもあったという。無神論地下文書の系譜、みたいなものも形づくられていたようだ。また、17世紀初頭からの宗教批判の高まりとは対照的に、政治への批判が浮上するのは17世紀末になってからで、それ以前はガッサンディ周辺のリベルタンなどでさえ政治的には保守的だったとされる。彼らは「絶対王政の熱烈な支持者になった」というのだけれど、その理由が「民衆の力の噴出を恐れるあまり」(p.62)なんだとか。うーむ、なにやら微妙にパラドクサルでにわかには納得しがたいものもあるような……。このあたり、もう少し詳しく見てみたい。