ルイスによるアンセルムス批判

神から可能世界へ 分析哲学入門・上級編 (講談社選書メチエ)今週後半は八木沢敬『神から可能世界へ 分析哲学入門・上級編』(講談社選書メチエ、2014)を読んでいる。まだ前半部分を見ただけだけれど、個人的にはなかなか面白い構成になっている一冊。なんというか、道案内付きの散策路に連れ出されたような心持ちになる(笑)。分析哲学の入門書シリーズの三冊目(上級編)ということで、その入門書としての役割は十分に果たせているということなのだろう。同書では、アンセルムスによる有名な「神の存在証明」を、現代の分析哲学がどう読むのかということをメインストリームとし、その解説に必要な事項を随時、具体的な事例を交えて解説していくという体裁を取っている。ときおりその解説は、ちょっとした大きな迂回路に入ったりもし、それはそれで興味深い散策経路が見通せたりもする。前半の核をなしているのはデイヴィド・ルイスによる様相実在論からのアプローチ。そこで定式化されたアンセルムスの証明は、妥当性はともかく健全性において難があるということがルイスによって指摘されていくわけなのだけれど、その定式化の過程で浮かび上がるルイスの理論的な体系がなんとも渋い(笑)。後半はどうやら、様相実在論よりも優勢だという現実主義(ネイサン・サルモン)から見たアンセルムスの証明という話になるようだ。