雑感:今年もLFJ

個人的なメモ。連休後半の土日、例年同様にラ・フォル・ジュルネ音楽祭に行く。今年は例年以上に人出があった感じもした。ここ数年は、個人的に民族音楽とその周辺を狙うというのが普通になってきていて、今年もその路線で公演をはしごする。聴くことのできた主な公演としては、シルバ・オクテットによるロマ&クレズマー&バラライカ音楽、ヴォックス・クラマンティスによるアルヴォ・ペルトの声楽曲、音楽祭の表題にもなっていた「Carnet de voyage」というプログラム(ギタリストのエマニュエル・ロスフェルダーが、バンドネオンや弦楽四重奏団、ソプラノなどと絡むというもの。カスタネットのお兄さんがいちばん美味しい役どころだった)、カンティクム・ノーヴムに尺八、箏、三味線、二胡を配した編成による「シルクロード」というプログラム、ロイック・ピエール指揮によるミクロコスモスというグループの「La nuit dévoilée」。ほかに現代曲のプログラムなどもいくつか。

総じて、以前によりも演出の要素が重視されるようになってきている気がした。たとえば「シルクロード」のパフォーマンスでは、曲のつなぎをスムーズに処理し、自然に次の曲へと移行していく演出だった。これがなかなか見事に決まっていて、洋の東西を巧みに行き来する様が描き出されていたと思う。それにもまして今回特筆すべきはミクロコスモスのパフォーマンスか。観客席をも巻き込んで、舞台を立体的に活用する演出。ときおり使われる音叉の音やライティングの妙とも相まって、デミウルゴス的な世界の誕生というか、カオスからの秩序の形成、不安や恐怖から安寧への移り変わりが描写されていく。舞台を中心に会場は深淵な空間と化したかのよう。演奏されたのは主に現代の作曲家の作品だったが、とても印象深い舞台だった。