2004年02月26日

「シャコンヌ」の変容

昨日はヒリヤード・アンサンブルとポッペンの来日公演に行く。CDと同じ「モリムール」(われらは死す)と銘打った今回の公演、前半はポッペンによる現代曲を挟んで、ヒリヤード・アンサンブルの声楽曲。やはりピエール・ド・ラ・リュの2曲は秀逸。各声部だけを追えるほどに、どのメンバーも明晰で、全体の対位法的な鮮やかさが見事。さすが。後半は「モリムール」。バッハの「シャコンヌ」が妻への追悼として死をイメージしたものだという説(かなり突飛な説らしいが)をもとに、シャコンヌが「引用の織物」であることを示そうという興味深い試み(ま、死のイメージ云々はともなく、引用の織物という点は、バッハの曲に限らず、同時代の音楽全体がそんな感じだけれど)。ポッペンのソロでの「シャコンヌ」はなかなか躍動感があって、多少うがった見方だけど、死が生の下支えをしているというメッセージ性が伝わる感じ。さらに味わい深いコラール類を挟んで、今度は「歌つき」の「シャコンヌ」が演奏される。これがまた実に面白い仕上がり(同じヒリヤードアンサンブルが、サクソフォンと競演した時のアレンジに、どこか通じるものがある)。すっかり容貌を変えたシャコンヌの新たな世界、という感じで、実に美しい。拍手。こういう試み、個人的には結構「買い」だな。

投稿者 Masaki : 13:20

2004年02月20日

モンテヴェルディ

このところ忙しかったのが、ようやく一息。そんなわけで、久々にモンテヴェルディものを。コンチェルト・ヴォカーレ(ルネ・ヤーコプス指揮)による2枚組『戦争と愛のマドリガーレ』(HMC 901736.37)。うん、全体に跳躍感に溢れる爽快な感じがする1枚。マドリガーレ集第8巻の録音だけれど、ライナーにはモンテヴェルディによるその第8巻の序文の仏訳まで載っているのが嬉しい。ちょっと前に読んだヴルフ・コーノルト『モンテヴェルディ』(津上智美訳、音楽之友社)(時代背景や音楽環境などにも目配せしたバランスのよい評伝だ)によると、この序文、モンテヴェルディが晩年に取りかかり日の目を見なかった新しいモノディ音楽の理論的基礎付けの断片だという(戦いの感情を表すには短短脚の韻律、その逆の感情には長長脚がよいというモンテヴェルディは、様々な感情を含んでいるというタッソの詩『タンクレディとクロリンダの戦い』にそれを適用し、以後そのスタイルの洗練に努める)。なるほどね。


さて、上のCD、ジャケット絵はパルミジャニーノの『弓を削るアモール』。ウィーンの美術史美術館所蔵とか。パルミジャニーノは16世紀のマニエリスム第1世代に属する画家。この作品でも人体(人じゃないけど(笑))の曲線がひときわ目立っている。
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投稿者 Masaki : 21:51

2004年02月08日

スイングするビーバー

昨日はアルス・アンティクァ・オーストリアの公演に。演目はビーバーの「ロザリオのソナタ」。うん、前面に立ったバイオリンとアーチリュートのスイングするパフォーマンスがなかなか。ビーバーの面白さもまさに炸裂。ビーバーは今年没後300年を迎える。以前演奏会やCDで聴いた「戦争」でも弦楽器を弾きまくって鉄砲に見立てるとか、いろいろ面白いことをやっているけれど、この「ロザリオのソナタ」(マリアの生涯を描くソナタ集で、15曲とパッサカリアから成る)でも、イエスの鞭打ちなどを、楽器を酷使して表すなど、かなりユニーク。演奏も疾走感に溢れていて好演。一転して復活の場面の神々しさや、マリアの被昇天の喜びに溢れた情景なども特筆もの。いや〜、なかなかよかったっす。古楽系の演奏会では滅多に出ない「ブラーヴォ」の叫びも出ていた。

投稿者 Masaki : 21:56

2004年02月02日

若きヘンデル

昨日はテレビでベルリン・バロック・ゾリステンの演奏を放映していた。昨年12月の東京での公演。ビオダ・ダモーレなんか久々に見たなあ(ビオラ・ダ・ガンバっぽい外見でヴァイオリンぽく弾く楽器。曲はヴィヴァルディのヴィオラ・ダモーレ協奏曲イ短調)。エマニュエル・パユのフルートも見事(テレマンのフルート協奏曲ト長調とか、バッハの組曲第2番とか。アンコールでの日本語トークも大したもの(笑い))。テレビ、それも地上波でバロックものを見るのは結構久しぶりな感じもする。

さて、今日はちょっと前に購入したCD、ヘンデル『主は言われた(Dixit Dominus)』(Erato、vol 7)を。演奏はエリオット・がーディナー指揮のモンテヴェルディ合唱団+オーケストラ。ヘンデル22歳の頃(イタリア時代の1707年)の作品(詩篇109番)だというけれど、なんとも高い完成度。一番最後に『ジョージ2世の戴冠式アンセム』の冒頭である「司祭ザドク」も入っているのだけれど、この1727年の作品(英国市民権を取った年)とさほど遜色がない(アリアを多用するなどのイタリアっぽさはあるかもしれないけれど)。

このCDの解説カードに使われている肖像画(ヤン・ファン・デル・バンクなる画家による)は1711年ごろ(英国に渡ったころ)だというけれど、だとするとヘンデル26歳ごろだが……うーん、若きヘンデルは曲も風貌もとても年齢相応には見えないかも(笑)。さすが、というべきか(?)。

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投稿者 Masaki : 22:54