2005年09月30日

エスペリオンXXI

天才ジョルディ・サヴァール率いる(というか、サヴァール一家でやっている)エスペリオンXXIの公演を聴く。ほぼ期待通りで感激。今日のって、日本ツアーのファイナルコンサートだったのね。プログラムは「時代と瞬間」というタイトルで、前半は大陸、とくに中世以降のイベリア半島にちなんだ東西の伝承曲のパレード。アラブ圏、ユダヤ圏、ブルターニュ、ギリシア、モロッコ、トルコなどの伝統音楽を彼ら流にアレンジして、見事に歌い上げた。さながら「地中海文化圏」の総覧のよう。大陸的な哀歌の数々。まるでマリア・ロサ・メノカル『寛容の文化』(足立孝訳、名古屋大学出版会)への伴奏音楽のよう、とか思ってしまった(笑)。後半は「詩と音楽」という副題で、17世紀(リバヤスやトビアス・ヒューム、マレなど)にサヴァール一家のオリジナル曲・即興演奏を交えた構成。フェラン・サヴァールによるテオルボの弾き語りが妙に新鮮だったり、アリアンナ・サヴァールのハープ弾き語りが素晴らしかったりしたが、極めつけはトビアス・ヒューム(17世紀ヴィオール曲の作曲家)の幻想曲。ジョルディ・サヴァールの技が光っていたなあ。アンコールは3曲+イスラエル民謡再演のおまけつき。ぜひまた一家そろって来日してほしい。

投稿者 Masaki : 23:47

2005年09月17日

ドレスデン

昨日はぎりぎり間に合って、西洋美術館で開催の「ドレスデン国立美術館展−−世界の鏡」に行く(なにしろ19日までなのだ)。ザクセン選帝侯のコレクションだという今回の展覧会、意外に面白いのはイタリアの18世紀絵画と陶器の数々。前者はベルナルド・ベロットの風景画の数々が素晴らしい。描かれているのはありえない風景だったりするのだそうだけれど、まさにパノラマ的な没入感を与えてくれる。後者はマイセンの陶器とそのモデルになった中国と日本の陶器の比較が実に面白い。一見しただけで気がつくのは、山水の無軌道的な線画が、西欧においては微妙な曲線の増殖に置き換えられていたり、ぼやけた輪郭が明確になったり、意味不明なフィギュールになんだか無理矢理(?)意味を付そうとしていたりすること。翻って考えると、日本での西欧音楽受容にはその逆のベクトルなどが働いていたかもしれないなあと。

ドレスデンといえばやっぱりヴァイス。だからというわけではないのだけれど、今週のヴェニス・バロック・オーケストラの公演会場で販売していたCD、『バッハ&ヴァイス−−リュートとヴァイオリンのための組曲イ長調』(Sony Records International、SRCR 2734)を聴く。ヴァイオリンのカルミニョーラとリュートのキルヒホーフの協演。バッハ&ヴァイスというタイトルのわりに、表題作のほかは同時代のトリオ集(クロプフガンス、コハウト、ルスト)など。なんだかなあ。こういう売り方はちょっと考えて頂きたいのだが……。演奏的には実に正攻法な感じで、カルミニョーラもずいぶん抑えた演奏だし(キルヒホーフに合わせたのかしら?)。思いの外リュートを響かせた録音。マイクでも入れない限り、実際のホール空間でこれは再現できないだろう。CDならではという一枚か……。

ジャケット絵はコルネリス・サフトレーフェン(1607-81)の『デュエット』という一枚。ロッテルダムで活躍した画家のようだ。それにしてもこの右の人物が弾いているのはリュートじゃなくてシターンなんですけどね。すこしばかり似ているからって、リュート関連の曲にこういう絵を安直に使うなってーの。まったく。
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ついでにドレスデン展のバロットからも一枚。この人、時に師匠のカナレットを名乗っていたらしく、ややこしい。『ヴェローナのアーディジェ川』。
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投稿者 Masaki : 23:48

2005年09月14日

アンドロメダ・リベラータ

昨日はヴェニス・バロック・オーケストラの公演で「アンドロメダ・リベラータ」を聴く。一応ヴィヴァルディ作ということでの公演だけれど、パンフレットの解説によると、様々な作曲家の作品を寄せ集めたパスティッチョだという可能性もあるのだそうで、どこまでヴィヴァルディの手が入っているのか不明なのだという。初演は1726年。オペラじゃなくて、祝賀行事用のカンタータ(セレナータ)なのだそうだ。

いや〜それにしても名品のアリア目白押しという感じではあった。特に後半すぐのアンドロメダのアリアと、後半中盤のペルセウスのアリアは大いに盛り上がった(客の入りが少し寂しかったのは残念)。演奏は全般に後半の方がノってきた感じだった。歌手のすぐ後ろ、チェンバロ横に二人配置したアーチリュート(リウト・アッティオバート)が大活躍していたのがなんとも素晴らしい(笑)。

投稿者 Masaki : 11:37

2005年09月03日

即興

これまたなかなかの聴き応えだったのが、『アル・インプロヴィーゾ(即興にて)』(アルベジャータ&クリスティーナ・プルアール)(Alpha 512)。副題が「チャコーネ、ベルガマスケ……そして少しのフォーリア』となっていて、それぞれの舞曲を実に見事な即興で仕上げた快作だ。この即興演奏の巧みさ、なんともお見事というほかない感じ。イタリア、スペイン、ポルトガル、そして南米(ライナーによるとチャコーナは南米の起源なんだそうな)の伝統的舞曲は、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの宮廷に取り入れられ活況を呈していたことが知られている。一連のチャコーナのしなやかさや、ベルガマスコのどこかトラッドフォークっぽい開放感、さらにフォーリアの哀感などなど、聞きどころがいっぱい。またカプスベルガー(17世紀)の名前がそのまま付けられたバスもとても面白い。いや〜これはたまらないっすね。晩夏にとっても似合う一枚だ。

投稿者 Masaki : 21:17