2006年11月27日

アーノンクール祭?

先週金曜深夜(土曜朝)のBS、日曜の「芸術劇場」と、アーノンクールの来日公演の映像が続いた。これら、チケットぴあなどでは、ほとんど発売開始5分勝負だったようで、個人的には少し遅れてしまって残念ながらチケット取れなかっただけに、今回の放映はとても嬉しい。BSのほうはウィーン・コンツェルトゥス・ムジクスによるモーツァルト「主日のための夕べの祈り」(K321)「レクイエム・ニ短調」(K626)、芸術劇場のほうは、今や押しも押されぬ巨匠になったアーノンクール、古楽的なアプローチというよりは伝統回帰というか情緒たっぷりで重厚な音作りを前面に出すようになって久しいけれど、今回のモーツァルトもまさにそういう感じ。晩課のミサ曲などは(「レクイエム」もそうだが)荘重すぎて(?)、なんだか軽やかさがなさすぎに感じられるほど。別に奇をてらったものがいいわけではないのだけれど……。先に取り上げた『モーツァルトの宗教音楽』によると、K.321はやはりロマン派ごのみなのだとか。でもこれ、生音で聴いていたら確かに感動ものだったのではと推測する。オーセンティシーを超えてオーソリティへ……けれど、どこか一抹の寂しさも感じずにはいられない。「芸術劇場」で流していたモーツァルトの交響曲もそうで、なんだかごくごく「普通」の演奏で、思わず聞き流してしまいそうになったほど。

この放送を受けて、積ん読ならぬ積ん聴だったCDを引っ張り出してかけてみた。一つはベルリン交響楽団の独自製作盤によるバッハ。組曲1番と3番、さらにオーボエ、ヴァイオリン、弦楽器のための協奏ニ短調が収録。2002年のライブ録音だというが、お得意のバッハにしても、古楽的な感じはほとんどアーティキュレーションのあたりにしか感じられないほど「こなれた」(?)演奏になっている。また、なによりも重厚感重視の音作りがよくわかるのは、ブルックナーの5番。SACDハイブリッドで、2枚組。もう1枚にはリハーサル風景が収録されているという贅沢な一枚。うーん、でも、変な言い方だが、内容的には、これじゃそこいらの「巨匠」とあんまり変わらないじゃないの(笑)(どこか土臭いヘレヴェッヘの演奏のほうが、個人的には好みだったりする)。

投稿者 Masaki : 13:05

2006年11月23日

ドン・ジョヴァンニ

モーツァルト・イヤーの今年、フランスのほうでデジタルリマスター版DVDの登場と相成ったのが、ジョゼフ・ロージー監督の映画『ドン・ジョヴァンニ』(Gaumont DVD)。1979年の作品で、オペラをそのまま古城に移して野外オペラ的にしたもの。70年代メークの女性陣は時代を感じさせるし、冴えない感じにしか見えないドン・ジョヴァンニ(ルッジェーロ・ライモンディ)ほか男性陣も、今見るとなんだか野暮ったい感じではある。オペラ歌手本人の出演ということなのだが、劇場での上演ではありえないクローズアップの多用という点で、出演者たちもかなり表情の作り方とか無理をしている感じがする。もちろん印象的な場面(運河の艀の上で歌うシーンとか)は点在しているのだけれど(ヴェネチアらしいロケーションは見事で、古城の雰囲気がとてもよいのだが)、自然な効果音(砂利の音、水の音など)と音楽とのミクシングにも違和感が……。時代的な衣装を着ての奮闘だけに、こういう淡々とした演出はちょっと退屈か。映画的でも劇場的でもなく、オペラの映画化というのはこれが理想型では到底ないなあ、という感じ(逆にどんな演出ならオペラとしても、映画としても面白いのか、考えさせられる結果に(笑))。それでも演奏はキマっているのはさすが。ロリン・マゼール指揮、パリ・オペラ座の合唱団と交響楽団によるもの。

投稿者 Masaki : 13:15

2006年11月15日

スティング

リュート愛好者にとって、この秋最大のニュースといえば、やはりスティングがダウランドを歌う最新CD『ラビリンス(Songs from the Labyrinth)』(UMG)だ。これ、9月末ごろに日本先行発売だったらしい。ショップではクラッシクの棚を飾っていたようだ。で、この中身がまたなんだか度迫力。地声でポップスみたく野太く豪快に歌っている。ダウランドにしても、声楽とかやっていないとなかなか安易に歌えない(とくに人前では)ものだけれど、もっと自由に歌っていいじゃないか、という感じがとても好ましい。17世紀も、宮廷はともかく、辻音楽などにはこういうパフォーマンスだって十分あったかもね、と思わせるところがいい。伴奏を付けているのはエディン・カラマゾフ。ボスニア出身のリュート奏者だそうで、これまた剛胆、奔放な弾きっぷり。装飾も満載。かなり自由に押し込んでくる。スティングの歌い方に、「こいつに合わせられるのはオレ様ぐらいだ」(cf. 『のだめカンタービレ』1巻)ってな感じで(笑)ガンガン突っ込んでくるのがすさまじい。いやー面白いねえ、これ。

スティングといえば、以前の「デザートローズ」(テレビドラマ『夜叉』の主題歌だった)でのアラブ音楽とのコラボなど、なんだかボーダーレスな姿勢が面白いと思ってはいたものの、いきなり古楽に飛び込んでくるとは意外だった。ライナーにアーチリュートをかかえている写真があって、これがなかなか格好いい。とはいえ、YouTubeに載ったテレビ出演時のビデオでは、高音弦だけを単音で弾くパフォーマンスでちょっと笑いを誘ってしまったが……。いずれにしても、今後も楽しみかもね。

投稿者 Masaki : 23:25

2006年11月10日

レゾナンツェン古楽祭04

毎年1月にウィーンで開かれているというレゾナンツェン古楽祭。その演奏の一部を収録したCDも毎年出ているようで、そのうちの『レゾナンツェン2004--夢と現実』(ORF - cd 372)を聞いてみた。毎年テーマが変わるのだそうで、2004年はこの副題の夢と現実というのがテーマ。収録された曲目のうち注目株はというと、まず1枚目からは、サバール指揮のエスペリオンXXIとラ・カペラ・レイアル・デ・カタルーニャによるシャイトの名曲「マニフィカート」12番。いつもながら懐の深さを感じさせる演奏だ。トマス・ウィマー指揮のアクセントゥス・アウストリアはスペインもので表情豊かな演奏が素晴らしい。特に発見だったのはアラブ音楽を取り込んでいるホアン・ブルデュー(16世紀)やフアン・デル・エンシナの面白い曲。2枚目では、まずパオロ・パンドルフォ指揮のラビリントの演奏による英国もの。トマス・ヒュームとダウランドのガンバ曲。うーん、渋い演奏だ。アルス・アンティクア・アウストリアはビーバーの名曲「ロザリオ・ソナタ」から3番。なんだか少し浮ついた感じながら、手堅くまとめているといったところ。グイド・モリーニ指揮のアコルドーネはイタリアもの。多彩な選曲がいかにも音楽祭という感じで、その祝祭的な雰囲気の一端を味わえる気がする。ライブ録音のため、咳払いとか入っているけど、臨場感があってなかなか(笑)。他の年の録音も聴きたくなること請け合い。

ジャケット絵はブリューゲルの『バベルの塔』の一枚。ウィーンの美術史美術館所蔵のやつ。一連のバベルの塔の絵では、あの黒々とした完成後の塔の絵よりも、こちらの工事中で未完成の塔のほうが、原型とされるアッシリアの寺院ジッグラトをいっそうよく連想させてくれる。石材を運ぶ機械やら、背後の街のディテールやら、どこをとっても興味深い絵。左下に小さく描かれているのは視察に来ているニムロデ王なんだとか。

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投稿者 Masaki : 20:04

2006年11月05日

レ・パラダン

昨日は、シャトレ座の出張公演となったラモーのオペラ・バレエ「レ・パラダン--遍歴騎士」を観に行く。ラモーの晩年に近い1760年初演の、全体的に明るく軽快ながら、どこか集大成的な円熟味をもった曲だ。演奏は大御所ウィリアム・クリスティ率いるレ・ザール・フロリサン。この日も、実に軽妙な味わいの演奏。パーカッションなどが絶妙な味を出していた。で、なんといっても話題なのがジョゼ・モンタルヴォとドミニク・エルヴェの演出。なるほど、快活な調子のバロック音楽が耳にもたらす快楽を、視覚的に移し替えるなら、こういう感じになるかもね、という感じの演出&振り付けだ。CGを映し出すスクリーンプロセスと、ダンサーたちの「コラボ」。シンクロは見事だし、歌い手に合わせて、その道化または心象よろしくダンサーが踊るというのも面白い趣向。スクリーンプロセスの映像は、ときにシスティーナのミケランジェロっぽかったり、ときにどこかシュールレアリズムかヒエロニムス・ボスか、といったグロさと遊び心が混じったような絵だったり。パリ公演では「メトロが走った」という部分が、山手線っぽく変わっていて苦笑したり。

ヒップホップ系などを含む現代のダンスとバロック音楽の親和性というのは、最近いろいろ言われているけれど、確かに演出によっては面白いものができそうな気はした。ま、それだけになってしまったら、それはまた寂しい気もするのだけれど(笑)。今回の上演では、前半はその斬新さもあってなかなか楽しめたのだけれど、後半は物語の筋が起伏に乏しくなり(話の基本線は前半で出尽くすからね)、あとはダンスが見せ場となるのだけれど、全裸のダンサーとか出しても、結局は前半で見せたものの延長という感じが強く、個人的には少々飽きてしまった(苦笑)。演奏が見事だったので、そちらに助けられた感じ。

投稿者 Masaki : 08:10