2006年12月27日

手回しオルガン

教会暦では1月の上旬までは広義のクリスマス。そんな時期はやはりオルガン。今年は『聖歌隊とハンドル(Les Chantres et la Manivelle)』(Ligia Digital)を聴く。演奏はアンサンブル・ヴォックス・カントーリスという団体。CDの内容は、1750年のヴェジュビ(南仏)渓谷の写本で残るミサ曲(これは復活祭ミサなので、ちょっと時期はずれるのだが(笑))を中心とした、19世紀ごろの教会で演奏されていたという手回しオルガンのレパートリー。世俗曲や流行の旋律なども取り込んで、ちょっと変わった曲目になっている(収録されている「スターバト・マーテル」には、なんと「フィガロの結婚」の一節が使われている!)。そもそも、手回しオルガンが教会ミサで使われていたというのにちょっと驚いた(録音に使用されたのは、サン・シャフレの手回しオルガン。1820年ごろの作を修復したものだという)。辻音楽だけじゃなかったんだねえ。オルガンと聖歌隊とが交互に歌い上げるという形なのだけれど、教会内でも一部で批判されていた慣例だったようだ。いずれにしても、この修復された手回しオルガンの音色はなかなか見事。

投稿者 Masaki : 22:39

2006年12月21日

バロックダンス

年末に向けて徐々に部屋の掃除などもしなければならないわけだけれど、そんな中、かなり前に購入して積ん読(聴)にしておいたまま、いつの間にか行方不明になっていたDVDが出てきた(笑)。『宮廷の華--バロック・ダンスへの招待II』(浜中康子監修、音楽之友社、2004)。空き時間に部分ごとに鑑賞してみる。「ボーシャンのサラバンド」など舞台公演での実演、ステップの解説、舞踏譜の解説などから成る。異なる記譜法の解説もあって興味をそそる。テクニック編に見られる様々な足の動きは、まさにバロック時代の装飾音をいかにも視覚的に写し取ったような感じ。もちろん、音楽そのものと踊りとが装飾的にシンクロしているわけではないけれど、時代的な空気として共通する部分はあるということか。全体的には鑑賞用というよりもお勉強ビデオだけれど、なかなか面白い。

投稿者 Masaki : 21:32

2006年12月13日

ブクステフーデ・イヤー

2007年がメモリアル・イヤーな作曲家として、個人的に筆頭に起きたいのはブクステフーデ(1637 - 1707)。没後300年ということになる。ただブクステフーデは、オルガン曲もカンタータも全体的に曲想が渋すぎるので(笑)、あまり華やかな感じではないかもしれないけど。ま、その渋いところがいいのだけれど。最近聴いているものとしては、リュート奏者として名の知れたコンラート・ユングヘーネルが率いるカントゥス・ケルンの『ブクステフーデ:イエスの四肢』(HMC 901912)。ブクステフーデのこのカンタータは、沈痛さと穏やかさが混在する渋柿のような曲想。それを抑制の利いた歌声と伴奏で盛り上げている。うん、なかなかの一枚かも。

ジャケット絵は、表はジョット派による「ノリ・メ・タンゲレ(私に触れるな)」(1320年頃)。ちょっと違うけど、ジョットのものを挙げておこう。また裏はフラ・アンジェリコの「キリストの嘲弄」(1439年頃)。サン・マルコ修道院にあるフレスコ画。キリストのまわりを囲む手の数々が面白いが、それよりも下に座する聖母マリアと、聖ドミニコだという書を読む聖職者の姿がむしろ印象的だ。

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投稿者 Masaki : 20:42

2006年12月07日

レンブラント……

モーツァルトイヤーだった2006年ももう師走。もちろんモーツァルトだけじゃなく、ショスタコーヴィチとか、古楽関連でもマラン・マレなんかの「切りの良い」メモリアルイヤーでもあったわけだけれど、意外に忘れられているのは絵画のほうだったりする。今年はレンブラントの生誕400年(1606年7月15日)だということで、レンブラントの同時代あたりの作曲家を集めた企画もののCD(2枚組)が、廉価なブリリアントから出ていた。『レンブラントの黄金時代の音楽』(ブリリアント・クラシックス、93100)がそれ。演奏はオランダのムジカ・アンフィオンという古楽器演奏団体。率いているのは若手チェンバロ奏者のピーター=ヤン・ベルダー。どこか耽美的な感じの音が、コンセプトとしてのレンブラントにマッチしている気がする。曲目の中では、特に1枚目ののっけから渋い演奏が続く(コーネリス・シュイト、スウェーリンク、ニコラ・ヴァレ……)。2枚目のファン・エイクのリコーダー曲、ファン・ノールトのオルガン曲(ベルダーの演奏)など、総じて歌曲よりも器楽曲のほうが聞きどころ満載。

ライナーによると、レンブラントには音楽家との親交などはほとんどなかったらしいのだが、音楽とレンブラントを結びつけようとするこのCDの試み自体は、同時代のオランダの宗教的・社会的環境の理解のために企画されたのだという。ジャケット絵はレンブラントの肖像画。1661年のものだというから、55歳のころのものか。まさにおのれの最も顕著な性向が顕在化する年齢という感じだ。ちなみにこちらのページに、レンブラントの肖像画の変遷があって興味深い。

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投稿者 Masaki : 16:31