数学者たちと曲線

微分積分学の誕生 デカルト『幾何学』からオイラー『無限解析序説』まで高瀬正仁『微分積分学の誕生 デカルト『幾何学』からオイラー『無限解析序説』まで』(SBクリエイティブ、2015)を読了。一七世紀から一八世紀にかけての微積分の成立を、当時の主要な数学者だったデカルト、フェルマー、ライプニッツ、オイラーを通じて見ていくという興味深い概説書。取り上げられる各人の、数学的なスタンスの違いがわかりやすく解説されている。キーをなすのは曲線についての理解だ。曲線というものがこんなにも数学者たちを惹きつけていた、というのがまずもって興味深い。デカルトはあくまで曲線を理解するという目的のために、曲線に接線を引くことを目指していたとされる。フェルマーはどちらかというと技巧派・職人的で、曲線を理解するという意識はあまりなく、接線を引くという技法をひたすら極めようとしていくのだという(その結果として、サイクロイドへの接線を引く方法や、極大極小問題での成果を得ているのだ、と)。ライプニッツにいたると、求積法を志向することによって、デカルトが排除していたような超越的な諸量の微分へと至り、いわば「万能の接線法」が見出される。オイラーにおいては、変化量の依存関係としての関数が考案され、曲線の代数的な理解がもたらされる……というのがごく大まかなアウトラインなのだけれど、やはり実際に数式を用いて、それぞれの著者たちがどのような具体的な設問に取り組んでいったのかを再現しているあたりが、一番の読みどころ。それにしても、一七・一八世紀のものも、それ以前のものも、昔の数学書は記号法や言葉づかいなども今とはだいぶ異なっていて、なかなか的確に意味するところを掴むのは難しいというのが実感だけれど、それをひたすら読み解き、現代の数式に移しかえて概要を見せてくれるところは、数学史研究のまさに真骨頂という感じだ。