マジックリアリズム(魔術的リアリズム)というと、日常的世界の描写に、非日常的なものが突然フッと差し挟まれる、という例の描写ですね。ラテンアメリカ文学などで多用されていました。ガルシア=マルケスの『百年の孤独』とかですね。ものや人体が突然浮遊したりする描写が代表的で、Netflixで配信していたドラマ版『百年の孤独』でも、いろいろ浮んだりしていましたね(笑)。でもまあ、マジックリアリズムってそれだけじゃないよなあ、とは思います。
今やいろいろなところで使われているらしいこの技法ですが、先日wowowオンデマンドで観たインド映画『私たちが光と想うすべて』(2024年、バヤル・カバーリヤー監督)では、「え?」と思う使われ方をしていました。これ、ちょっと斬新だったかもしれません。
https://www.imdb.com/title/tt32086077/

後半のとても重要なエピソードとして、主人公の看護師の女性が、村人が見守る中、海岸で溺れていた(?)男性を救助します。担ぎ込まれた民家の老婆は、二人が夫婦だと勘違いするのですが、その直後、二人きりになったところで、ドイツに出稼ぎに行って帰ってこない夫がその男性に乗りうつったかのように、二人は夫婦としての最後の(?)会話を交わすのです。
とっかかりは少し違和感を覚えますが、マジックリアリズムなんだろうな、と思って観ていると、なんかいいんですよね。これ。遠くにいるはずの夫に対する、女性側からの内面の吐露として、とてもいい場面設計になっていたと思います。おそるべしマジックリアリズム。可能性はまだまだ広がっていそうです。もっとも、緻密に計算した場面設計でないと、観る側が理解できなくなってしまうので、ぎりぎり紙一重のところが勝負なのかも。



