昨日NHKで放映していたサンデルの東大でのレクチャー。これに、「二人の人物が助けを求めているとき、あなたが一人しか助けられないとしたらどちらを助けるか」なんて問いかけが出てきた。サンデルはこれにコミュニティへの帰属問題を絡めていたけれど、その部分はさしあたり置いておくと、この一見アポリアに見える設問、実はこういうふうに抽象化されるせいでアポリア感が強まってくる。現実的・具体的な情報が与えられればなんらかの対応策がありうるかもしれないわけで。状況のパラメータは無数にあり、端から見れば弱腰とか逃げているとか見られても、場合によってはいったん現場から立ち去って援軍・仲間を呼びに行くほうがよい、なんて選択もありうるはず。でもサンデル流の設問の仕方では、そういう方向にすぐには思考が行かないようある意味「誘導」(言葉は悪いが)されている感じも。前提はこうこう、その中で考えるならどうか、みたいな、学生ディベートなどでよくやる問題の搾り方・外堀の埋め方なのだけれどね……。そう、サンデル流の設問って、具体的な問題とかいいながら、捨象するところは捨象して、結構うまく抽象化されている。そのあたりが名人芸といえなくもないけれど(笑)。
一人では対応できない状況なら複数でもって立ち向かう、というのは案外プラグマチック。すっごく卑近なところでは、福本伸行の『カイジ』の限定じゃんけんとかにもそういう話があったし(笑)、CSチャンネルで先日やっていた『スタートレック・ヴォイジャー』のとあるエピソードでも出てきた(笑)。肝心なのは周到に準備して、一端そういうスタンスで行くとなったらブレないこと。ブレると破綻するという話も両方に出てくるし。そりゃそうよねえ。なにやらこのところ中国への対応とかでいろいろ騒がしいけれど、これなどもASEAN諸国あたりと連合組んで対応するとか、何かやり方はありそうな気もするのだが……?