ほとんどタイトルに惹かれて、ほとんど予備知識なしにエンツォ・パーチ『関係主義的現象学への道』(上村忠男編訳、月曜社)を読む。20世紀中盤ごろのイタリアの思想家だというパーチ。タイトルにある現象学方面の構想を綴った論考を集めて一冊としたもので、なにやら序論ばかりを立て続けに読まされている感じもしないわけでもない(苦笑)。けれども、有限物の実存的過程を、無限の地平から立ち現れる結節点のように捉えるという壮大なパースペクティブ、人間を宇宙の中心に据えるような真似をしない人間主義、絶対的なものから解き放った上での形而上学的必然性の奪回などなど、壮大な構想が語られていくさまはなかなかに圧巻。ハイデガーの批判的な読みとかフッサールの読み直しとか、あるいはデューイやホワイトヘッドのプロセス論の評価などは、それ自体なにやら当時の西欧思想の大きなうねりを垣間見るようで興味深いし、そうした読み直し作業はきわめて今日的な課題でもあるように思われるし。個人的には、アリストテレス的に「現勢化するにはすでに現勢化しているものの力を借りなくてはならない」とするのではなく、逆に現勢化は超越的な可能性(すなわち、著者がエネルギーといった言葉で表している関係性とコミュニケーション)によるのでななくてはならない、として、一種の情報論的(in-formational)なスタンスを示しているところとかがビビッときたり(笑)。このあたり、以前読んだ米本昌平氏の著書とかを思い出す。