生命現象とコミュニケーション理論と
今年の初めごろに岩波文庫に入った、グレゴリー・ベイトソン『精神と自然』(佐藤良明訳、2022)を、kindle版で読んでみました。ダブルバインド理論で知られるベイトソンですが、この本は一般向きに軽妙な筆致で書かれていて、とても読みやすいものです。
もちろん、認識論、進化、発生などの生命現象を、コミュニケーション理論などにもとづいたいくつかの概念でもって、串刺し的・横断的に絡め取ろうというものなので、それなりに難解ではあります(著者が用いる概念や用語の説明が衒学趣味的なので、少々面食らう部分がありますね)。とはいうものの、示された議論はとてもスリリングで、知的興奮をいざないます。
生物学や社会人類学を経てきた著者の、時代に先駆けた学際性が光ります。