(初出:deltographos.com 2023/07/16 )
映画にもなった『火星の人』(映画のほうは未見ですが)が、とても良かったアンディー・ウィアー。その長編3作目だという『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(上下巻、小野田和子訳、早川書房)を読了しました。今度もまた、様々な問題に巻き込まれて、対応しなくてはならない主人公の姿を、とても細やかでリアリスティックな描写で描いています。圧巻ですね。
今回の大問題は、いきなり地球を救うというミッション。『火星の人』では、置き去りになった側と、帰途についた側、そして地球の管制塔の側の話が順に展開していく構成でしたが、今回のこれは、ミッションにかり出された理科の教師(もとは研究者)の話と、そこにいたる過去の話が交互に語られていきます。そして壮大な危機。主人公は果たして地球を救えるのか?
……と思いきや、なんとファーストコンタクト話になっていきます。ファーストコンタクトものもいろいろありますが、今回のは状況が面白いですね。こちらが科学者・技術者、同じく異星人の側も科学者・技術者で、共通の問題を抱えていたとしたら?当然、とりあえずは協働する道を探るだろうと思います。でも、そもそも意思の疎通はどうするのか。このあたり、とても細かい話になりそうですが、それを見事な処理で描き出しています。そのための数々のアイデア、いずれも実に秀逸です。すばらしい。
ネタバレですが、このバディの関係、なにやら個人的には、『攻殻機動隊』のトグサ(バトーじゃなく)とタチコマを連想したのでした(笑)。