年越し数学史

非ヨーロッパ起源の数学―もう一つの数学史 (ブルーバックス (B-1120))みたび年越し本。まだ読みかけなのだけれど、ジョージ・G・ジョーゼフ『非ヨーロッパ起源の数学―もう一つの数学史 (ブルーバックス (B-1120))』(垣田髙夫、大町比佐栄訳、講談社)がとても面白い。タイトル通り、エジプト、バビロニア、古代中国、古代インド、アラビアなど非ヨーロッパ圏の数学の発展を、文献に残る具体的な数学問題を紹介しながら追っていくというもの。興味深いのは、そうした数学問題について、その文献に残る解法を近代的な解法と対照させているところ。たとえば、「ある数に1/4を加えると15になる。そのある数を求めよ」という問題は、現代の代数なら一次方程式でx + 1/4x = 15を解けばよいだけなのだけれど(答えは12)、エジプトの代数はこれを次のように解くという。ある数を仮に4だとすると、15となるべきところが5となる。5は3倍すれば15になる。よって仮定した4に3をかければ正しい答えになる……。これは記号式代数以前には一般的だった一次方程式の解き方だといい、ヨーロッパでもかつては用いられていたものなのだとか(p.115)。こういう「発見」がいろいろ詰まっていて飽きない。原著は1990年刊で、訳書も1996年刊。残念ながら出版社側の在庫切れらしいのだけれど(古書で入手可能)、ぜひ復刊してほしいところ。

数学の歴史 (放送大学教材)同じように例題などを交えながら、古代から近世までのヨーロッパの数学史ならびに和算をカバーしているものに、三浦伸夫『数学の歴史 (放送大学教材)』(NHK出版、2013)がある。こちらも通史的に全体を俯瞰できるところがとても有用だ。たとえばカルダーノ(16世紀)による三次方程式の解法。x^3 + 6x = 20を例にその解法が示されている。まずは6の三分の一である2を立方して8。定数部分(20)の半分を二乗すると100。これと8を足して108。平方すれば√108、これを2度作り、定数の半分である10を一方に加え、もう一方から引く。√108 + 10(二項和)と√108 – 10(二項差)。これらの立方根を取り、二項和の立方から二項差の立方を引く、と。