物理世界と文化世界

音韻についての、物理現象からの説明


 まだ読みかけですが、すでにちょっと面白いので言及しておきたいと思います。マーク/シャンギージー『<脳と文明>の暗号』(中山宥訳、ハヤカワ文庫、2020)。認知科学の立場から、言語と音楽の起源に迫ろうという、壮大な考察です。でも語り口は平板で、身近なところから入っていくのが好印象ですね。

 で、特筆すべきは3分の1ほどを占める最初の章です。音声学・音韻論の基本について、物理的な音、というか人間が認識する音響のパターンをもとに、説明づけている点が、実に見事ですね。人間が認識する音は、基本的に「ぶつかる」「こすれる」「鳴る」の三つの動きからなり、同時にそれは音声言語の音も同様だというを論じ、物理音の認識がベースになって言語音は組み立てられている、という、言われてみれば至極もっともかもしれないことを、ページを割いて懇切丁寧に説明してくれているのでした。いいですねえ、こういうの。

 残りの3分の2は、いよいよ音楽についての考察になるようです。物理世界と文化世界を、認知科学でもって橋渡ししていこうという姿勢に、なにやらとても共感します。

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