『赤い橋の殺人』
またまたkindle unlimitedからですが、シャルル・バルバラの代表的中編『赤い橋の殺人』(亀谷乃里訳、光文社古典新訳文庫、2014)を読んでみました。一種の準ミステリー的な作品です。原著は1855年刊行で、訳者(バルバラを再発見した当のご本人とのこと)による巻末の案内によれば、いくつかバージョンがあるようです。「準ミステリー的」と称したのは、主要登場人物の犯罪関与が早い段階からが何度か示唆され、後半の謎解きの意外性は薄く、いわゆる純正なミステリーには属さないものの、どこか同時代のミステリー系の作品群から影響を受けているように思われるからです。でも、ストーリー構成などを含めて、作品自体はなかなか興味深く、最後まで一気に読ませます。
寡聞にして知らなかったのですが、このバルバラ、ボードレールの同時代人で親交もあり、弦楽器製造業の家に生まれているのだそうです。自身もバイオリンをたしなみ、それもあってか、作品でも音楽が盛んに言及されます。狂言回し役などはもろに奏者・音楽教師ですね。