ネコひねり問題

壮大な科学史絵巻


 タイトルに惹かれて読んでみました。グレゴリー・j・グバー『「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた』(水谷淳訳、ダイヤモンド社、2021年)。軽い読み物なのかと思いきや、ネコの正常着地現象を題材に、主に初期近代から現代までの科学史を、力業的に引き寄せるという、読み応え十分の一冊でした。

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 なるほどネコひねりは、どういうメカニズムで成立しているのかよくわからないという現象なのですね。それを解き明かすために、さまざまな関連技術、学問的仮説の数々を史的にめぐっていきます。どこか「わしづかみ」という雰囲気を醸しています。写真術の発明、初期の物理学的考察、動物生理学の発展、はては現代科学、宇宙開発にまで話題が広がっていきます。なかなか壮大です。

 原題はFalling Felines and Fundamental Physics(落下するネコたちと基本物理)で、2019年刊。訳者のあとがきによれば、著者は物理学の教授で、光学迷彩などの研究者だそうです。初の一般向け著書なのだとか。筆致(翻訳の?)はとても軽妙で、ぐいぐい読ませますね。