「Esel Lautenspieler」カテゴリーアーカイブ

フレンチタブのビウエラ本

先日、リュートの師匠のところで共同購入の形で取り寄せていただいた、フランス式タブラチュアによるビウエラ曲集『ビウエラのための三つの曲集(“Tres Libros de Musica para Vihuela” ed. Dick Hoban, Lyre Music Publications, 1996)』。これを空き時間にちょこちょこと眺めている(笑)。ビウエラ曲は普通はイタリア式タブラチュア(数字式)だけれど、これはそのフランス式(アルファベット式)でのトランスクリプション版。リュートは一般に、まずはフランス式で習い始め、やがて進んできたらイタリア式も学ぶというのが普通だけれど、人によってはこれが取っつきにくさにもなるのだという。同書はそうしたイタリア式の壁を低減させようという試み。なかなかよく出来ている感じだ。師匠の受け売りだが、ビウエラ曲の普及という意味でもこれは結構有用かもしれないなあ、と。個人的には、ゴンザレスのビウエラ曲集CD-ROMに当たりを付けるための参考資料として使おうと考えている。とりあえずこのフランス式で適当にさくさくと弾いてみて、面白そうならちゃんとしたイタリア式の原典を見てじっくり……みたいな使い方を想定。ま、ルネサンスものについては実はイタリア式タブラチュアのほうが好みだったりするし、逆にフレンチ式で書かれた曲のイタリア式トランスクリプションとかもあってもいいかも、なんてこともちょっと思ったり(それってまったくもって現実的ではないが……苦笑)。

トン・コープマン講義

トン・コープマンの新譜を聴くのではなく、著書を読む(笑)。『トン・コープマンのバロック音楽講義』(風間芳之訳、音楽之友社、2010)。てっきりもっとエッセイ本のようなものかと思ったら、小著ながらかなりハイブラウな一冊。これはもう、トン・コープマンによる「原典講読の勧め」というところ。当時の記譜や演奏習慣を再現・再構築するためには、周辺情報も含めた広範な文献に目を通さなくてはいけないということで、とくに装飾や即興演奏、アーティキュレーション、テンポなどそれぞれの項目について、最初に読むべきとされる当時の文献が紹介されていく。そう、奏者もそれなりに博学でないと、という話(これって、ある意味当然なのだけれど)。素人のしょぼいリュート弾きですらも、ある程度は原典のタブラチュアを見、当時の音楽論の書を読み、時代全体に関心を寄せる必要がある、と最近とみに思う次第。去る日曜には毎年恒例のリュート講習会もあったのだけれど、やはり理論とか考えなしにだらだらと弾いていてはいけないなあと自戒する(って、だらだら弾くのだってそれなりに難しいのだけれど……苦笑)。

ビウエラ曲集ファクシミリコレクション

少し前に注文してやっと届いたのが、リュート製作家カルロス・ゴンザレス氏編纂によるビウエラ曲のファクシミリコレクションCD-ROM(“Libros de musica para vihuela 1536-1576”。「ビウエラ七賢人」(byリュートの師匠)が16世紀半ばにそれぞれ刊行した曲集(タブラチュア)のファクシミリ版がすべてカラーで入っているというもの凄さ。話には聞いていたけれど、これほどのものとは。いや〜感激。ファクシミリ版でなければわからないことってやはりいろいろある……。たとえば、イタリア式タブラチュアは数字で書かれているのだけれど、旋律部分が赤だったりするため、これが白黒コピー(大抵の出版楽譜は白黒で再録していたりする)だと薄くなってしまい、2なのか3なのか5なのかときに微妙にわからなかったりする(苦笑)。ちなみにこのCD-ROMはWindows用。Macではそもそもメニューが出てこない。そのためVMWare FusionでXPを動かして使っている。ちょうど最近プリンタを長年使ったOKIのモノクロレーザーからHPの廉価なインクジェットに変えたばかりで、カラー印刷するとこれまた美しい(笑)。

ビウエラ本

090415-143532こちらも最近アマゾン・ドイツのマーケットプレースから届いた一冊。ルイス・ミランのビウエラ曲集(Luis Milan, “Libro de musica de vihuela de mano”、1535)。もとは1927年にライプチヒで出たオリジナルのタブラチュアと五線譜の「対訳本」で、94年にそれをリプリントしたもののよう。抄本かなと思っていたら、ちゃんとフルバージョンで、40曲余りのファンタジアその他諸々がすべて入っていた。わぉ、こりゃ嬉しい(笑い)。こういうのを眺めていると、ルネサンス・リュートで弾くのもいいけれど、ちょっとマジでビウエラを入手したくなってくる(笑)。個人的にはイタリア式のタブラチュアもそれなりに馴れてきたと思うけれど、このミランのタブラチュアは通常のイタリア式タブラチュアと上下が逆、という不思議なもの。このあたりに何か意味があったのか、というのはとても気になるところ。ま、それよりもなによりも、ルイス・ガセル『16世紀の演奏習慣に見るルイス・ミラン』(Luis Gasser, “Luis Milan on Sixteenth-century Performance Practice”, Indiana University Press, 1996”)なんてのもしばらく前から積ん読になっているので、まずはそちらを読んで勉強しよう(笑)。