引き続き、アタナシアーディ『後期プラトン主義における正統派をめぐる戦い』からメモ。まず取り上げられているヌメニオス。アパメアが一大文化拠点となり、様々な哲学・宗教の流派が入り乱れて混在していた当時に、その地にあって、ペルシア、エジプト、バビロニアなどの宗教的伝統、ユダヤ教、キリスト教などをひとまとめにし、人間と神とを繋ぐ道の体系化を図ろうとしたのがこのヌメニオスなる人物。まさに全宗教的な神学を目指していたというわけなのだが、それだけに、属していたプラトン主義陣営の後続の人々からは不評を買っていた。反ヌメニオスの嚆矢はポルピュリオスだといい、イアンブリコス、マクロビウス、プロクロスなど、次第にその敵対関係はヒートアップしていく……と。カルデア神託との関係で言うと、ちょうど同時代的ということで、どうやら最近は、神託とヌメニオスの影響関係が双方向的にあったのではないか、という話になっているらしい。なるほどね。いずれにしても興味深いのは、なにがしかの「原点回帰」を唱えるヌメニオスが、後の時代には多分に折衷的と見なされて主たるプラトン主義陣営から排斥されていくという点。「原点回帰」ということが原理的に孕む微妙な危うさ、というところか?