久々の新刊ウィッシュリスト

しばらく新刊情報の備忘録をつけていないなあということで、久々に(笑)。

このところ、中世がらみの総論的な書籍がいくつか目につく。たとえば、まず『知はいかにして「再発明」されたか』(マクニーリー&ウルバートン著、冨永星訳、日経BP社)。これは近所の本屋にも平積みになっていて、ちょっとだけ立ち読みさせてもらったけれど、図書館、修道院、大学などから、文芸共和国(レピュブリック・デ・レットルかしらね。これは「文壇」とか訳すのだぞ、などと昔は習ったものだが……(笑))を経て20世紀まで、知の組織化の歴史を大局的に俯瞰するという内容。意外に要所要所は記述が細かい印象。同じく、イスラム世界の科学・思想などをこれまた大局的にまとめた一冊らしいのが、『失われた歴史』(M.H.モーガン著、北沢方邦訳、平凡社)。著者が作家・ジャーナリストだということで、読みやすいのではないかと期待(笑)。

岩波は相変わらず中世もの(広義の)が目白押し。すでに刊行されている『「私たちの世界」がキリスト教になったとき』(ポール・ヴェーヌ著、西永良成、渡名喜庸哲訳、岩波書店)は、著名なローマ史家ヴェーヌによるコンスタンティヌス論(評伝なのかしら?)。面白そう。中世プロバーものとして個人的に大いに期待しているのは、『カラー版ヨーロッパ中世ものづくし』(キアーラ・フルゴーニ著、高橋友子訳、岩波書店)。図版とか楽しみ〜(笑)。ついでに、78年の『中世の産業革命』(ジャン・ギャンペル著、坂本賢三訳、岩波モダンクラシックス)も再刊。この人の名前、ジンペルなのかジャンペルなのかギンペルなのか、いまだに不明。そのあたり何か言及していないかしら。

それからこの秋の岩波ものの期待の星は、なんといっても『バウドリーノ』上下巻(ウンベルト・エーコ著、堤康徳訳、岩波書店)。エーコの小説作品としては4つめの邦訳。久々の中世もので、フリードリヒ・バルバロッサの養子になった主人公の冒険活劇だそうで。早く読みたいぞ。あと、個人的に『タルムードの中のイエス』(ペーター・シェーファー著、上村静ほか訳、岩波書店)なんてのも、ちょっと見てみたいところ。ユダヤ教側からのイエス像ということでしょうね、きっと。

すでに刊行されて評判らしいものとしては、『イタリア古寺巡礼』(金沢百枝、小澤実著、新潮社)や、『異端者たちの中世ヨーロッパ』(小田内隆著、日本放送出版協会)あたりもぜひ目を通したいところ。またビザンツ関連では、『ビザンツ 驚くべき中世帝国』(ジュディス・ヘリン、井上浩一監訳、白水社)なんてのがもうすぐ刊行らしい。このあたりも注目したい。専門書界隈では、『中世ヨーロッパの祝宴』(水田英美ほか著、渓水社)は相変わらずの論文集シリーズ。あと、『中世盛期西フランスにおける都市と王権』(大宅明美著、九州大学出版会)も面白そうなところではある。

今月はだいたいこんなところかしら。ま、例によって取りこぼしもありそうだけれど、それはまた今度ということで(笑)。

(17日:リンク直しました(苦笑))