これまたいただきものなのだけれど(ちょっとだけお手伝い本だったので)、米本昌平『時間と生命 – ポスト反生気論の時代における生物的自然について』(書籍工房早山、2010)を読み始める。ちょうどヴァンサン・カローの本で、目的因の衰退と作用因の躍進の話をひたすら追っているところでもあり、扱う時代は違うしスタンスも異なるものの、ある種のシンクロ感があったりもする(笑)。で、この『時間と生命』、「自然理解のための武器庫に放置されてきた、目的論という原石を、二一世紀生物学の到達状況にあわせて利用可能な仕様に磨き上げてみる道」をめざすという、なんとも野心的な計画の第一歩に位置づけられている。作用因を中心とする因果論を越えて、目的因を新たな形で復権させようということらしい。うーん、変なトンデモに陥ることなくそんなことが可能なのかどうか個人的には皆目わからないけれど、なるほどそれは(もし本当に可能なら)とても壮大かつ刺激的な探求の道になるかもしれない……なんて。まだざっと最初の4分の1程度を見ただけだけれど、とりわけ後半に展開しているらしい著者の考える方途が、個人的にはちょっと楽しみ。
前半は歴史的な文献(19世紀)の翻訳から構成されていて、しかもこれが引用ではなくまとまった抄訳という体裁を取っている。単著で読むのは骨が折れる様々な文献を、一般読者がアンソロジー的に読めるという点で、これは形式として結構斬新かも(笑)。著者のガイドと本文とを行き来しつつ、立体的に楽しめるという趣向かしら。古い文献の翻訳などは、単体での出版はかなり難しくなっている感じがするけれど、著述にそってそれなりの量の訳文をアンソロジー的に編んでいくというのは、案外いい方法かもしれないなあと、ちょっと思ったり。