「イスタンブール」

ジョルディ・サヴァールによるCDリリースは相変わらず精力的。先の『忘れられた王国』も良かったけれど、最近出たもう一枚が『イスタンブール – ディミトリ・カンテミール「音楽学の書」』(Istanbul – Dimitrie Cantemir: “The Book of Science of Music” and the Sephardic and Armenian Traditions / Jordi Savall, Hesperion XXI。今度は全編インストゥルメンタルで東方の音楽を満喫できる。サヴァールお得意のアラブ系サウンドだけに、実にメリハリの利いたノれる音楽になっている。ま、ちょっと西方ぽい感じのトーン(?)もなきにしもあらずだけれど……。いや〜、でも全体としてはとても面白い。今回の録音は、18世紀になる直前にイスタンブールに渡ったディミトリエ・カンテミールというモルダビア(ルーマニアの北のほうか)の王子が記した『音楽学の書』という音楽理論書をフィーチャーしたもの。この人物、実に11カ国語を話せたといい、最初は人質として、後には外交官としてイスタンブールに滞在したという話で、「タンブール」という楽器(リュートっぽいものらしいが)の名手でもあったのだという。この書物には多くの曲が独自記譜法により記されているのだそうで、サヴァールはその現代譜版を入手して、時代考証などを踏まえて演奏を試みているらしい(以上ライナーから)。