「魔術師たちのルネサンス」

当然ながら、忙しい時には、短い断章がたくさん並んでいるような書籍を空き時間でちらちら眺めるというのがやっぱり良い。逆のじっくり型の本は、とぎれとぎれに読むと全体の流れを見失ってしまう(苦笑)。で、澤井繁男『魔術師たちのルネサンス』(青土社、2010)はまさにそんな「忙しい時」の空き時間読書に最適。重そうなタイトルとは裏腹に、ルネサンス全般を軽いタッチで、トピック別に25の短い章にまとめたエッセイ集という趣向か。各章も、著者の身近な話などを枕にしているので、どこかの連載のよう。そんなわけで、どこからでも拾い読みできる。でも、各章はそれぞれもっと長大な論考にも発展させられるような凝縮された内容なので、ややもったいない感じがしないでもない……。古代や中世との繋がりの中でルネサンスを見るというスタンスなので、それらへの言及も多々あり、全体像を手早く眺められるところも好感。枕の生き生きとした筆致が、学問的な内容になるとすっかり姿を消してしまうのがちょっと惜しまれる気も(笑)。