グンディサリヌスへ

以前に購入し部分的に目を通したことのあったドミニクス・グンディサリヌスの『哲学区分論』(De Divisione Philosophiae)を、ちょっと思うところあって、頭からの通読を始める。グンディサリヌスは、12世紀のスペインのスコラ学者(1110頃〜1190頃)。アラビア語からラテン語への翻訳(イブン・ガビロール、ガザーリー、イブン・シーナーなどなど)で知られる人物で、トレドで活躍した。翻訳のほかに自著もいろいろとあり、この『哲学区分論』はその代表作。手元にあるのは羅独対訳本(Dominicus Gundissalinus, “Über die Einteilung der Philosophie”, ubs. A.Fidora und Dorothée Werner, Verlag Herder, 2007)。でも、なんともすばらしいことに、ミュンスターで1903年に刊行された版がオンラインで公開されている(→PDFファイル)。余談ながらこれ、最近ツィッターで流れてきたサイト情報だったのだけれど、それにしてもこのヴァーチャルライブラリは素晴らしい充実ぶり。

まずはとりあえず本文の序章。「区分論」というだけに、大きなところから小さなところへとひたすら切り分けながら突き進んでいくというがその方法論。なんと最初は人間の欲求の区分から始まっている。欲求を精神的・肉体的と分け、精神的なものを有害・空疎・有益に分け、今度はその有益を徳と知に分け、知を神的なもの・人間的なものに分け、人間知を雄弁(文法・詩・レトリック)と賢慮(哲学)に分けていく。これが前半。後半は続いてその哲学を区分していく段になる。これまたちょっと紆余曲折があって(苦笑ながら割愛)、最終的に哲学は理論と実践に分かれるとされ、理論はまた、思惟の対象と物質性を基準に三つに分かれ(自然学、数学、神学)、実践も対象に応じて三つに分かれる(政治学、経済学、倫理学)。そして理論に先行するものとしての論理学も忘れていない。そうして次章は自然学についての詳論となっていく。ここまで、議論はかなりの速度でテンポ良く進む。これだから、ある種の中世のテキストは止められないのよねえ。この速度感をしばらく味わうことにしようと思う(笑)。