さしあたっての関心領域ではないのだけれど、少し寄り道してマルティン・キンツィンガー『中世の知識と権力』(井本しょう二他訳、法政大学出版局)にざっと眼を通す。中世の学知、とりわけカロリンガ・ルネッサンスから12世紀ルネッサンスを中心に、それが権力とどう結びついたのかといった問題を扱っている。学問復興の歴史や、大学の成立の話などは様々な書籍で扱われているわけだけれど、同書はそれを知と権力の結びつきという切り口でまとめようとしたもの。なるほど方向性は面白そうだ。古代においては学問の師は尊敬こそされても、権力者として振る舞うことはなかった、師が権力を身に纏うようになるのはやはり中世だ……なんてことが時折言われたりするけれど、そんなわけで「学知と権力」と聞いて、ちょっとばかり食指が動いた次第。でも、同書自体はなにやら語り口が生硬な感じで、なかなか入っていけない(苦笑)。訳語が章ごとにぶれていたりするのも気になる。中世初期に始まった支配者と修道院に接触(文書的専門家の登用)が、後に宮廷学校に発展し(中央集権の確立期)、さらに後には市民が知的文化の担い手として台頭してくる(都市の発展)と、今度は教師と学生たちの自治という形で大学制度が整備される、といった歴史を駆け足で辿るわけだけれど、制度史と見るにせよ文化史と捉えるにせよ、もっとなにかこう、「知の権力化・制度化」について詳細かつ具体的な各論が読みたい気がする。現代的な教養論への問いかけも、問題意識としては分かるけれど、なにやら中途半端なような気も(?)(何を訴えたいのか、今一つなような……)。うーん、ま、とりあえずは何か「知の権力化」に関連する論考を探してみようか、と。
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