野菜たちの昇格(16世紀)

フェスティビティの時期でもあるし、軽めの話題ということで、ラウラ・ジャネッティ「イタリア・ルネサンス期の食餌の適応または青野菜の勝利」(Laura Giannetti, Italian Renaissance Food-Fashioning or the Triumph of Greens, in California Italian Studies Journal, vol.1(2), 2010)に目を通して見た。15世紀ごろまで、下層階級と上層階級の食習慣の差は歴然としていて、豆とか野菜とかは前者の食べ物、肉類は後者の食べ物という区分がほぼ出来上がっていた。で、この背景として、当然ながらそれぞれの階級の経済的な地位などが大きな要因をなしていたわけだけれど、もう一つには、アリストテレス的な四大元素の序列(存在の大いなる連鎖)にもとづき、土に近い食物ほど下層のものとする伝統的な考え方があったようだ。当時はまた、ガレノス流の温冷乾湿のバランスにもとづく食餌が重視されたりしていたといい、結果的に青野菜はかなり低い地位に置かれ、「動物の食い物」といった評価がなされていた。ところが16世紀くらいになると、都市化の進展などに伴い、とりわけイタリアで食習慣が変わっていく。青野菜のサラダは、それにかけるドレッシングの趣きと相まって、イタリアでもてはやされるようになる。医学や植物学の専門家が、観察や経験に根ざした議論でもってそうしたサラダを擁護する文献(書簡など)を記すようになり、さらに文学作品などにも取り上げられ、イタリア初のそうした食習慣はゆっくりと定着していくようになる。フィチーノやエラスムス、ダヴィンチなども、そうした食餌を評価していたのだとか。うむ、今や社会階層云々に関係なく(笑)、ローストチキンばかりでなくサラダも食べないとね。

同論考には、フェリーチェ・ボゼッリの絵が採録されている。というわけで、ここでもwikipediaから同作家の静物画を(1600年ごろ)。