【書籍】自由意志の向こう側

自然主義の隆盛


 木島泰三『自由意志の向こう側——決定論をめぐる哲学史』(講談社選書メチエ、2020)を読んでみました。哲学史上の決定論(運命論)の系譜を、古代から取り上げているのですが、こうした問題では、やはり近代以降の多少ともアクチャルな議論が興味深いところです。科学の進展にともなって、人間観としても自然主義がますます隆盛になりつつある昨今、そこから導かれるであろう各種の決定論に、ただ付き従うのではなく、自由の議論の側もどのようなカウンターを繰り出せるのか、あるいは百歩譲ってどのような折衷案を突きつけることができるのか。そういうことを問うている一冊です。

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 哲学史の研究は、その歴史的な文脈にひたすらこだわり、徹底的に身を閉ざすことも可能ですし、あるいはまた、そうした文脈から離れて、アクチャルな問題を史的な観点からひたすら逆照射するという可能性ももちろんあります。でもそれらはどちらも極端な立場ですよね。両者の中間、いわば折衷案的なスタンスも幅広く存在しえます。それらを広く提示し、読者にいろいろな可能性を提示して見せる、という立場も当然ありえます。で、同書はまさにそういうスタンスを取っています。