「古楽 – バロック以降」カテゴリーアーカイブ

ラルペッジャータ – 補足

昨日のエントリで記したラルペッジャータのCDは、ボーナスDVDが付いているお得盤。これが付いていない盤もあるようだけれど、やはり映像つきのほうが(笑)。ちなみにこのボーナスDVDは、「ラルペッジャータの10年」と題し、これまでの様々な録音・公演風景を収録していて見所たっぷり。で、なんと、これの一部がYouTubeで公開されている。全部じゃないのだけれど、それでも34分ほど(笑)。マルコ・ビーズリーが出ている映像もあるぞ!ビーズリー&アッコルドーネの公演がちょうど昨日と今日、東京であったんだっけ(行けなかったけれど……残念)。

ラルペッジャータ

いや〜これはまたすごい感動ものの一枚。ラルペッジャータの新譜『十字架の道』(Via Crucis [CD+DVD]<期間限定盤>)。結成10周年記念盤ということで、マリアの受胎告知からキリストの受難と栄光までを、17世紀のバロック音楽と伝承曲のアレンジなどで見立てていくという趣向のなんとも贅沢な内容。初っ端のビーバー「ロザリオのソナタ」からのプレルーディウムからしてすでに引き込まれる。そこから一転してナポリの子守歌。それに続くのはナポリの伝承曲タランテッラをベースにしたこのCDオリジナルの一曲。続くは17世紀のメルーラという作曲家の一曲……というふうに、時空もやすやすと飛び越えて(笑)聴く側のイマジネーションを刺激する。静から動、動から静へと、情感の揺さぶりがもの凄い。ビーバーのアリアなどは(これまた「ロザリオのソナタ」から)実に見事で、ぜひ全曲で聴きたい感じ。また珍しいところではコルシカの伝承曲が入っていたりする。ラルペッジャータはクリスティーナ・プルハール率いる古楽集団。以前、カヴァリエーリの『魂と肉体の劇』(最古のオラトリオとか言われているものですね)のCDがすごく良かったのを覚えている。で、今回のも負けていない(変な言い方だが)。指揮のプルハールはテオルボやハープの奏者でもある。ソプラノはヌリア・リアル、カンターテナーはフィリップ・ジャルスキー。

シュタイアーの「ゴルトベルク」

シュタイアーの演奏による『ゴルトベルク変奏曲』(J.S.Bach: Goldberg Variations [CD+DVD]を聴く。これはまた面白い。対位法の主旋律以外の音がまた響く響く。そのせいか、なんだかちょっと別の曲っぽいかのように、ゴルトベルクがまた違って響いてくる(っていうのは言い過ぎかしらね)。でもこれ、ある意味とても堅実なアプローチだということは、付録のDVD(!)を見ても分かる。音の運びやバッハの考え方などを縦横に語っていて興味深いのだけれど、総じて以前のモーツァルトものなんかとは全然違うスタンス。鍵盤を操る自在さ加減が、今回は別の次元に昇華されたような印象だ。うーむ、シュタイアーおそるべし……。ちなみにこれ、iTunesなら安く買えるけれど、やはりDVD映像があるのでCDで買うほうが個人的には良いかなと思った。

ペルゴレージ祭り

今年がメモリアルイヤーの作曲家の一人がペルゴレージ(生誕300年)。これに合わせてクラウディオ・アバドがペルゴレージを3枚出しているけれど、そのうちの2枚を聴く。作曲年代的には一番早い部類の曲が収められているのが、『ディクシト・ドミヌス』(Pergolesi: Dixit Dominus, Salve Regina, Confitebor Tibi Domine, etc / Claudio Abbado, Orchestra Mozart, Rachel Harnisch, etc)。曲目は表題作のほか、「主よ、あなたに告白します」「聞きも見もしない者は」「サルヴェ・レジーナ」(イ短調)など。「ペルゴレージの音楽は旋律の着想の表現性にあり、それはまさにより知的で規制的なトーンが期待される宗教音楽でとりわけ感じられる」とライナーの書き出しが言うように、まさに抒情感溢れるメロディに圧倒される。うーん、特に各曲の歌い出しとかが実に凝っている感じだ。アバド率いるモーツァルト管弦楽団(一応古楽系)も落ち着いていい雰囲気。音の流れにたゆたう感覚。

もう一枚は『聖エミディオのためのミサ』(Pergolesi: Missa S. Emidio / Claudio Abbado, Orchestra Mozart, Veronica Cangemi, etc)。表題作以外の収録曲は「サルヴェ・レジーナ」(ヘ短調)「ラウダーテ・プエリ・ドミヌム」ほか。ペルゴレージのスタイルをライナーでは「プレ・ギャラント」と称しているけれど、ほんと、圧倒的にメロディ重視。しかもそれがほれぼれするほどに美しいときている。うーん、素晴らしい。26で夭逝したペルゴレージの天才ぶりは確かに感じ取れるかも。アバドのじっくり練ったような音作りがまた映える。これも堪能できる一枚。

あと一枚は例の超有名な「スターバト・マーテル」。これは未購入なのだけれど、やっぱしそのうちゲットしておこう(笑)。

「イスタンブール」

ジョルディ・サヴァールによるCDリリースは相変わらず精力的。先の『忘れられた王国』も良かったけれど、最近出たもう一枚が『イスタンブール – ディミトリ・カンテミール「音楽学の書」』(Istanbul – Dimitrie Cantemir: “The Book of Science of Music” and the Sephardic and Armenian Traditions / Jordi Savall, Hesperion XXI。今度は全編インストゥルメンタルで東方の音楽を満喫できる。サヴァールお得意のアラブ系サウンドだけに、実にメリハリの利いたノれる音楽になっている。ま、ちょっと西方ぽい感じのトーン(?)もなきにしもあらずだけれど……。いや〜、でも全体としてはとても面白い。今回の録音は、18世紀になる直前にイスタンブールに渡ったディミトリエ・カンテミールというモルダビア(ルーマニアの北のほうか)の王子が記した『音楽学の書』という音楽理論書をフィーチャーしたもの。この人物、実に11カ国語を話せたといい、最初は人質として、後には外交官としてイスタンブールに滞在したという話で、「タンブール」という楽器(リュートっぽいものらしいが)の名手でもあったのだという。この書物には多くの曲が独自記譜法により記されているのだそうで、サヴァールはその現代譜版を入手して、時代考証などを踏まえて演奏を試みているらしい(以上ライナーから)。