「古楽 – バロック以降」カテゴリーアーカイブ

バルカレス・リュートブック

帰省中もiPodで聴いていたのがこれ。『バルカレス・リュートブック』(The Balcarres Lute Book。これがまたとても良い(笑)。バルカレス・リュートブックというのは、17世紀末ごろの英国のリュート曲集なのだそうだけれど、バロックというより、よりルネサンス的なというか、民衆音楽的な雰囲気を湛えたどこか素朴な曲集。それもそのはずで、ライナーによると、スコットランドの民謡や、英国のエア、バイオリン曲のアレンジなどが入っているものなのだとか。基本的にはフレンチのバロックリュート(11コースもの、Dマイナーチューニング)用とのことで、18世紀初めごろは英国の12コースの楽器よりもそちらが好まれたらしいという。シルヴァン・ベルジュロンの演奏は、これを実に見事に美しく、時にしめやかに、時にドラマチックに歌い上げてくれる。この人、ポール・オデットやオイゲン・ドンボワに師事したとある。しかもあの古楽アンサンブル「ラ・ネフ」(個人的には『ペルスヴァル – 聖杯伝説』のメロウな録音が最高!)の共同創設者だったとは!お薦めっす(笑)。

ボッケリーニ

昨晩だけれど、久々にコンサートに行く。昨年秋の腰痛以来、なかなか外部の催しには行けないでいたけれど、ようやくリハビリ(笑)。公演は、初来日だというキアラ・バンキーニ&アンサンブル415(この名称、たぶんバロックでよく使われるピッチ(415Hz)が由来でしょうかね)によるボッケリーニ。これは珍しいプログラム。前半は弦楽五重奏曲を二つ、後半は「スターバト・マーテル」。このスターバト・マーテルも、弦楽五重奏にソプラノ(マリア・クリスティーナ・キール)というとても面白い編成。ボッケリーニ考案の編成なのだとか。なんだか久々の生音が、とても柔らかに響いた。ソプラノとの絡みも、声量といい全体の雰囲気といい言うことなし。悲痛な感じの出だしから、喜びの曲想に波打つように変化し、また短調で締めながら栄光を歌い上げる、みたいな。ボッケリーニって結構いいかも……って、こういうのはやっぱし生音でないとわからない気がする。今回の公演はもう一つ副題「さよならカザルスホール」が付いている。3月末で閉鎖するなんて、実にもったいない(ホール設立からわずか22年)。うーん、なんなんでしょうね、この文化事業の短命さは……。なんだか激しく情けない……。

エコー&リスポスタ

久々にまったく未知の曲の数々を堪能。『エコー&リスポスタ – ムーリ修道院付属教会柱廊からのヴィルトゥオーゾ器楽曲』(Echo & Risposta – Virtuoso Instrumental Music from the Galleries of the Abbey Church of Muri / Les Cornets Noirs。収録されている曲は、いずれも初期バロックのころの作曲家たちのようだけれど(イタリア、ドイツ)、ものの見事に一人も知らないという……。うーむ、久々にくらくらする感覚を味わう。けれどもどれも粒ぞろいの器楽曲。ムーリ修道院というのは、スイスはアールガウ州にあるベネディクト会派の修道院とか。そこの付属教会の建築は音響的に優れているとされ、またオルガンも有名なのだという。なるほどね。この盤はSACDサラウンドのハイブリッド盤なのだけれど、普通のCDで聴く限りはそういう音の立体感のようなものは伝わってこない……(涙)。うーん、やはりSACDでサラウンドでなければダメかなあ、と。とはいえそれぞれの曲は、初期バロックの移行期の作品だけあって(というか、様式というのは絶えず移行しているわけだけれど)とても面白いし演奏も端正でいい感じ。とりあえずはこれだけで結構満足。奏者はレ・コルネ・ノワールというグループ。ツィンク(コルネット?)、バイオリン、ファゴット、トロンボーン、それに教会内の二台のオルガン(左右をそれぞれ福音書側、書簡側というだっけ)という構成。

ゼレンカ

昨日は毎年のリュートの発表会。今年もケルナーとかビットネールの曲で臨むも、音ヌケとかミスタッチを乱発し、またあえなく撃沈(苦笑)。うーん、楽器の扱いはかくも難しいものなのだなあ、としみじみ。打ち上げでちょっと飲み過ぎて今日は一日中ぼーっとしていたけれど、そんな中、いつも通りクールダウンのためと称してCDを聴く。今回はリュート曲ではなく、普通に古楽もの。少し前に購入して積ん聴だったJ.D.Zelenka: Orchestral Suites, Trio Sonatas – 5 Capriccios, Concerto a 8 Concertanti, etc / Alexander van Wijnkoo(cond), Camerata Bern, etc)。5枚組の廉価版なのだけれど、とりあえず4枚目、5枚目のトリオソナタ集をかけっぱなしに。ゼレンカといえば、ボヘミア出身でドレスデンの宮廷楽長を務めた人物。あまり予備知識もないのだけれど、おー、バッハなどを彷彿とさせる曲想(っていうか同時代だからねえ)で、個人的にはとても乗れる。流しておくとちょっと集中力が高まってくる感じもする?(発表会前に聴いた方がよかったかしら?)。演奏はカメラータ・ベルン。録音はなんと1972年と1977年のもの。当時としては有名だった演奏だそうで。ライナーによれば、トリオソナタのパート譜には「バイオリンもしくはテオルボ」なんて書かれたものもあるというが、もう少し最近の録音ならテオルボが加わっているものもあるかも。ちょっと探してみようかしらん。

宗教音楽ボックス

先日これまた衝動買いしてしまったのが、ハルモニア・ムンディから出ていたボックスセット『宗教音楽』(“Sacred Music”, Harmonia Mundi France, HMX 2908340.33。グレゴリオ聖歌以前から始まって、中世、ルネサンスのポリフォニー、その後のモテット、ミサ曲、オラトリオ、レクイエムなどなど近現代にいたるまでの通史を聴くという趣きの29枚(プラス例によって歌詞の入ったCD-ROM1枚)。聖歌関連とかバッハなどを中心にやはりダブりもあるけれど(苦笑)、それ以外は未聴のものがいろいろあって、値段の割には結構得した感じ。まだ少ししか聴いていないけれど、その中ではボッケリーニのスターバト・マーテルとか(演奏は来日予定のキアラ・バンキーニ&アンサンブル415)、アレッサンドロ・スカルラッティのオラトリオ『カイン(または最初の殺人)』(ルネ・ヤーコプス指揮のベルリン古楽アカデミー)、メンデルスゾーンのオラトリオ『パウロ』(ヘレヴェッヘ指揮、シャンゼリゼ交響楽団、ラ・シャペル・ロワイヤル、コレギウム・ヴォカーレ)などが強烈な印象。特に『パウロ』は勇壮感あふれる壮大な曲想。演奏も言うことなし、みたいな。