「古楽・ルネサンス以前」カテゴリーアーカイブ

マルコ・ダラクィラ

同時に注文したCDの入荷がえらく遅延して、結果的に大幅に入手が遅れた一枚が、リュート奏者ポール・オデットの新譜(dall'Aquila: Pieces for Lute)。マルコ・ダラクィラ(アクィラのマルコですな)の曲集。16世紀前半に活躍したリュートの奏者・作曲家。これをルネサンスリュートの名手オデットが奏でるというわけで、面白くないわけがない(笑)。で、今回の録音は残響がすごく、高音弦がまるで鉄線か何かかのようにキンキン響いて聞こえる。けれどもそれもオデットの高い技術と相まると、とても幻影的で美しい音になるから不思議だ。というわけで、これはどこか神秘的な感じさえする音楽に仕上がっている。ライナーによると、録音はもともとアクィラで行う予定だったというが、大地震があったため予定を大きく変更し、最終的にカペストラーノのカステッロ・ピッコリーミニ(お城ですな)で執り行われたのだとか。マルコ本人も知っていたはずの建物らしい。同録音は地震の罹災者らに捧げられている。

これもiTunesで手に入る。ライナーノーツはないけれど、廉価ではあるので、お薦めかも(笑)↓。

オクシタニア祭り

昨日の『異端者の群れ』を読むのに最高のBGMとなるのが、ジョルディ・サヴァールの新譜『忘れられた王国 – アルビジョア十字軍、カタリ派の悲劇』(Le Royaum oublié – La Croissade contre les albigeois, la tragédie Cathare)(The Forgotten Kingdom: The Cathar Tragedy – The Albigensian Crusade / Jordi Savall。毎年出されるブック形式のテーマ別CDのシリーズ。今回のはまさにオクシタニアへの壮大なオマージュ。3枚組約60曲で奏でる、壮大な歴史絵巻という趣き。古いイスラム的な音楽から、いかにも悠久の大陸を思わせる哀感この上ない器楽曲、声楽曲まで、様々な楽曲が年代記に沿う形で次々に繰り出される。これはど迫力。演奏はもちろんサヴァール率いるエスペリオンXXI。アンドリュー・ローレンス=キングも参加している。ソリストはおなじみモンセラート・フィゲラスなど。さらにゲストとしてアルメニア、トルコ、ブルガリア、モロッコなどの奏者を入れている。曲の合間にいくつかテキストの朗読があって、これがまた雰囲気を一段と高めてくれる(ラテン語や古仏語のヒアリング練習にもなるかな)。たとえば1枚目では聖ベルナールへの書簡、2枚目ではカタリ派とシトー会との論争や、イノセンティウス3世の第一回十字軍の呼びかけなどなど。うーむ、もはやこれはオクシタニア祭り以外のなにものでもない(笑)。

リュートtube – 12 スコティッシュもの

Luthval氏の渋い一曲。逸名著者によるスコットランドの曲とか。1628年ごろのストラロックのロバート・ゴードン卿のリュート曲集から、とある。この「ストラロック・リュート・ブック」というのは英国ものっぽいけれど、結構良さそうな感触。たとえばNAXOSのライブラリにも、ボルティモア・コンソートの演奏でカナリー2曲が入っているっすね。

リュートtube – 11 再びムダーラのファンタシア

昨年末のクリスマスごろにアップされたtrolabe氏の演奏+イメージ画はなかなか見事なフォーマットだと思ったけれど、そのフォーマットを使って、今度はアロンソ・ムダーラのファンタシア10番が登場していた!わぉ、これはお見事。ムダーラの曲はこれに限らず超難しいけれど(苦笑)、とても味わいのある仕上がりっすね。前にジュリアン・ブリームの映像があったけれど(リュートtube 4)、それとはまた趣きの違った演奏が味わえる。今回はビウエラではなくルネサンス・リュートでの演奏。

宗教音楽ボックス

先日これまた衝動買いしてしまったのが、ハルモニア・ムンディから出ていたボックスセット『宗教音楽』(“Sacred Music”, Harmonia Mundi France, HMX 2908340.33。グレゴリオ聖歌以前から始まって、中世、ルネサンスのポリフォニー、その後のモテット、ミサ曲、オラトリオ、レクイエムなどなど近現代にいたるまでの通史を聴くという趣きの29枚(プラス例によって歌詞の入ったCD-ROM1枚)。聖歌関連とかバッハなどを中心にやはりダブりもあるけれど(苦笑)、それ以外は未聴のものがいろいろあって、値段の割には結構得した感じ。まだ少ししか聴いていないけれど、その中ではボッケリーニのスターバト・マーテルとか(演奏は来日予定のキアラ・バンキーニ&アンサンブル415)、アレッサンドロ・スカルラッティのオラトリオ『カイン(または最初の殺人)』(ルネ・ヤーコプス指揮のベルリン古楽アカデミー)、メンデルスゾーンのオラトリオ『パウロ』(ヘレヴェッヘ指揮、シャンゼリゼ交響楽団、ラ・シャペル・ロワイヤル、コレギウム・ヴォカーレ)などが強烈な印象。特に『パウロ』は勇壮感あふれる壮大な曲想。演奏も言うことなし、みたいな。