「古楽・ルネサンス以前」カテゴリーアーカイブ

リュートtube – 10 「かの聖母を讃えよ」

アドベントのこの時期は、個人的にはシュトーレンとか食べまくり(笑)。……なんてことは置いておいて、例のノルウェイの奏者trolabe氏が、この時期ならではという感じの演奏(と映像)をアップしている。なんとも切ない旋律をしっとりと奏でていて秀逸。曲は16世紀の英国もの。これが入っているという「William Ballet’s Lute Book」というのは、1590年ごろの曲集だとか。アイルランドのトリニティ・カレッジなどに写本があるそうで、アイリッシュな曲なども収録されているものらしい。

リュートtube – 9 「ヴェネティア風パヴァーナ」

ダルツァの小品ながらなかなかご機嫌な一曲。1508年の曲集からのものなんすね。奏者の詳細は不明だけれど、なかなか見事でないの。それにこの6コースリュートはとても弾きやすそう(笑)。

「ポッペアの戴冠」

2008年のグラインドボーン音楽祭で上演された『ポッペアの戴冠』(モンテヴェルディ/L’incoronazione De Poppea: Carsen Haim / Age Of Enlightenment O De Niese CooteをDVDで数回に分けてと観た。「舞台映えする」と評価されるダニエル・ド・ニースが肉感的に転げ回っているのが印象的(笑)。また、従者たちが性別を入れ替えて演じているのが面白い。ミニマルな舞台美術で、でかい布一枚がいろいろな場面を構成したりもする。エイジ・オブ・エンライトンメント・オーケストラは小編成ながら味わい深く、歌もいい。カメラで人物がアップになったりするときに、演出の細やかさもよくわかる(舞台を生で見ている人はそこまでわからないんじゃないかしら?)。指揮のエマニュエル・アイムはチェンバロの弾き振りで、なかなか堂に入っている感じ。パフォーマンスは全体的に高水準のようで、舞台もとてもセクシャルかつ緊張感のある優れもの。だけれど、個人的にはやっぱり入っていけないっすねえ、この世界。

『ポッペアの戴冠』は2回ほど実演を観たこともあるのだけれど、毎回なんというか、ポッペアが脳天気に描かれるほど、その脳天気さゆえにもたらされる悲劇の部分がとても不条理に見えてくる。セネカを死に追いやった後で、ネロとの関係を阻むものがなくなったとはしゃぐ姿なんか、かなりのグロテスク。というか空恐ろしい。ポッペアが政治的な野心をもっているように描かれるのならまだしも、情念に素直にしたがうだけで、そのツケがすべて、ネロの冷徹さを通じてすべて周りの人々に押しつけられていくようにしか見えない……と。うーん、こういう人物造形とこういう筋立てで、いったい何を描こうというのか、モンテヴェルディ。そもそもの元の意図がよくわからない。まあ、これがルネサンスからバロック的な逸脱感への移行ということなのだと言われればそれまでだけれど……。

でもこのプロダクションでは、演出のロバート・カーセンはなにやら最後にちょっとした皮肉なエンディングめいたいものを用意している(ように思える。ホントか?)。そう、戴冠してハッピーらっぴーで終わり、じゃちょっとね。

エンゲルベルク写本

久々に声楽曲を何枚か聴いているところ。そのうちの1枚がこれ。『エンゲルベルク写本314』(Codex Engelberg 314)。エンゲルベルクというとスイス山間部の町で、12世紀ごろからベネディクト会の修道院を中心として栄えた場所とか。で、14世紀後半に、その修道院の僧侶たちが集め編纂した歌集が、「エンゲルベルク写本314」というものなのだという。ラテン語のほかドイツ語の歌詞の曲も収録されているといい、当時のドイツ語圏音楽の一端が見られるものだという。以上ライナー。歌曲の多彩さもさることながら、ドミニク・ヴィラールの指揮でスコラ・カントールム・バシリエンシスの聖歌隊が演奏しているのだけれど、これがなんとも秀逸。実に柔軟に対応している感じ。透明感といいアンサンブルの調和といい、とても充実した時間が過ごせる。個人的には、お見事というしかない一枚(笑)。

「三つの曲集」

ビウエラ曲の作曲家アロンソ・ムダーラが1546年に出した「三つの曲集」(Los Tres Libros de Musica……)は、とても多彩な曲を収録していることでよく知られた一冊という。歌曲のほか、ビウエラその他の器楽曲も多数収録されているとか。ライナーによれば、スペインでの楽譜印刷が始まってまだ40年程度しか経っていない頃のことで、それは威信に満ちた企てだったともいう。で、この「三つの曲集」をベースに、同時代の作曲家たち(ミラン、ナルバエス、ダサ、オルティス、カベソン)を散りばめたアルバムが、ラケル・アンドゥエーサ&プライベート・ムシケによる『三つの曲集(三部の譜本)』(A.Mudarra: Tres Libros de Musica Seville 1546 / Private Musicke, Pierre Pitzl, Raquel Andueza)。ビウエラとギター担当はピエール・ピッツルという奏者。なんというか、装飾入れたり結構自由なアレンジ(?)で奏でている。でも全体に、大陸的な哀調漂うしっくりした一枚になっているところがニクい(笑)。ビウエラ演奏のお手本にはならないけれど(苦笑)、日が短くなった今の季節、割とお薦めな感じではあるかな(?)

ジャケット絵に使われているのはエル・グレコの「毛皮の婦人」(1600)っすね。向きが逆か……結構CDで使われている気もしなくない。