『ピカトリクス』だけを眺めているのもナンなので(苦笑)、魔術関連の参考書も併読しようと思い、以前に届いていたヴェスコヴィニ『魔術的中世』(Graziella Federici Vescovini, “Medioevo magico – La magia tra religione e scienza nei secoli XIII e XIV”, Utet Libreria, 2008)も開いてみる。400ページ超の本で、様々な著作や思想を取り上げている一冊のようだけれど、とりあえず第一章30ページにざっと目を通す。語り起こしとして言及されているのはアルキンディ。なるほど、西欧中世の魔術関係の文献は、9世紀アラブ世界のアルキンディから始まるというわけか。たとえばその『視覚論』は翻訳を通じて広まり、ロジャー・ベーコンやアルベルトゥス・マグヌスの引用するところとなる、と。さらに『第五元素論』やら『光線論』などを通じて、その後の「魔術」プロパーのテーマ系が出そろい、とりわけルネサンス以後に影響を強めていくことになるようだけれど、中世ではまだ個々のテーマが散発的に取り込まれたりする程度の印象を受ける(ホントか?)。章の後半では9世紀から12世紀にかけてヘルメス主義的な占星術・魔術の伝統ということで、『ピカトリクス』を初めとする代表的な文書が紹介されている。いろいろあるねえ。そのあたりも興味深いのだけれど、なによりもまずはアルキンディの文書をちょっと読んでみたいところだ。
2章以降はテーマ別に各論的議論が展開するようなので、また興味深い点などがあればまとめていくことにしよう。