口上

口上が後先になってしまったけれど、カルデア神託をめぐるミカエル・プセロスの書をいくつか読んでいく(訳出していく)ことにする予定。底本にするのは、フランスのベル・レットルから出ている『カルデア神託』(“Oracles Chaldaïques”, trad. E. des Places, S. J., Les Belles Lettres 1971-2003)の付録部分。カルデア神託は2世紀のユリアノス(カルデアの)もしくはその息子(魔術師とあだ名された)が収集し書き起こしたものとも言われるものの、実際のところの著者は不明。新プラトン主義の人々(イアンブリコスとかプロクロスとか)によって引き合いに出されるも、文書自体は現存しておらず、様々な著者が引いている断片が残るのみとなっている。内容も「三対」「世界霊魂」「知性」「天使」「コスモス」などなどのモチーフが織りなす、とても興味深いもの。

一方のプセロスは11世紀のビザンツの著名な文人・政治家。コンスタンティノポリスで1018年に生まれ、1078年(もしくは1082年)に没している。なんといっても、擬古文で著作を残し、古典ギリシア語の復権に一役買った人物。代表作『年代記』などが有名だけれど、哲学的著作も小品など多くのテキストを残している。で、一説によるとプロクロス経由(プロクロスによる註解が11世紀ごろまで残っていたという)で知ったらしいカルデア神託について記したテキストがいくつかある。重要なものは『カルデア神託註解』、『カルデア教義の概要』、『カルデア人の古代信仰概説』。一つめが一番長く、あとの二つは小品。ここではまず、小品から訳出していくことにしようかと。余力があれば『註解』そのものも扱いたいが、ま、それは先の話。そんなわけで、ポルピュリオス『命題集』の訳出はちとお休みかな(笑)。

ちなみに