時祷書

夏休みモードなのだけれど、とりあえず松田隆美『ヴィジュアル・リーディング – 西洋中世におけるテクストとパラテクスト』(ありな書房、2010)にざっと目を通す。パラテクストというとジェラール・ジュネットが用いた、本文以外でその本文の枠付けをなす諸々の要素(近代の本なら、題名、著者名、奥付から、表紙、帯、挿絵などまでカバーする)を指す概念。なにやらなつかしいっすね、この概念。で、同書は時祷書などの写本の特に文字装飾や挿絵を、本文との関連(関連がない場合も含めて)でもって検討していこうという趣旨の本。中世の写本を、テキストとパラテキスト(個人的に、「テクスト」ってあまり書きたくない。これは好みの問題だけれど)の「対立が生み出す調和」と捉えて、個々の問題を取り上げていく。図版が多数収録されていて(残念ながら白黒だけれど、それはまあ仕方ないか)、それを眺めるだけでもいろいろ楽しい。個人的には二章の後半や三章に出てくる、暦に絡んでの世俗の占星術的な要素がとりわけ興味深い。