やっぱエスプレッソ

空き時間読書ということで何気なく読んだ島村菜津『バール、コーヒー、イタリア人』(光文社文庫、2007)の、ある意味感動的なまでのコーヒー礼賛ぶりに大いに触発され、このところ家でエスプレッソを入れるのが愉楽のひとときになっている(笑)。使っているのは直火式のエスプレッソメーカー。加圧式によるこの味わいは確かにドリッパーでは出ない。ま、水も違うし本場とはだいぶ味も異なるだろうけれど、雰囲気だけは味わえるかな。抽出に結構時間がかかるので、それを待つというのも時間のリズムがゆっくりになるような気がして好ましい(飲むのはあっという間だけど)。ちょい足しブームじゃないけれど、ミルクやアルコールなど、いろいろ加えるのも試せそう。味わいというのがちょっとした工夫で幾多にも変化するものであること、いくつもの要素から成り立っていることを体現しているのがイタリア人の知恵なのかも、みたいなことを確か、リュートの兄弟子の方が以前言っていたっけなあ。それにしても、バールが持っているというきわめてローカルな関係性というのはちょっとうらやましい気もする。様々な要因がゆっくりと堆積してできた伝統という感じが一見するけれど、意外にそう古くはないのかもしれないというところに、ほかの国や地域でもそういうものが育つ芽はどこかにあるのかもしれない、なんて空想をめぐらしつつ……。