『チェーザレ』8巻

本屋で平積みになっていた惣領冬実『チェーザレ』8巻(講談社)。うん、今回の巻は1492年で、まさに風雲急を告げるプロローグ的な展開。相変わらずディテールが見事な絵も素晴らしい。うーむ、堪能。おお、今回の巻にはリュートも描かれているぞ。レコンキスタの勝利を祝う宴で、ロドリーゴとスフォルツァ枢機卿が話す場面。あれ?このリュートは心なしか9コースのような気が……(揚げ足取りをするわけではありませんが……)。当時のスペイン貴族の宮廷でどんな音楽が奏でられていたのか、とても興味をそそられる。この場面では擦弦楽器やリコーダーも描かれているので、合奏曲ということだけれど。リュートだけで言えば、ちょうど初の活版印刷によるスピナチーノの楽譜(ペトルッチ版)が出るのが1507年。さらにダルサの楽譜が1508年か(wikipediaより)。その15年前とはいえ、当時のレパートリーもそんなには違っていなかったろうな、と。オケゲムとかジョスカン・デプレあたりの編曲でしょうかね、やっぱり。もちろん本当はリュートじゃなく、すでにビウエラだった可能性も?うーん、悩ましいところです。

さらに今回の巻では、サヴォナローラとチェーザレがご対面する。「fortuna vitrea est; tum, cum splendet, frangitur(運とはガラスのごとし。輝くときに砕かれる)」 とサヴォナローラが言うと、チェーザレが「fortes fortuna juvat(運は強き者を助く)」とやり返すというやりとりが!前者はプブリリウス・シルス(前1世紀の箴言作家)から、後者はテレンティウス(前2世紀)からの引用とのこと。うーん、渋いぜ。