何回かに分けてやっと一通り見終えた、ハンス・プフィッツナーの歌劇『パレストリーナ』のDVD。ジャケットの絵からもお分かりのように、結構キッチュな感じの舞台。最近はやっぱりこういうのが多いのかしらね。一応これは2009年のミュンヘン国立歌劇場での公演。ミュンヘンはこの『パレストリーナ』が初演されたゆかりの都市。プフィッツナーはいちおう後期ロマン派に括られている(来年の「熱狂の日」とかで取り上げられるかしらん?)作曲家だけれど、個人的にはほとんど聴いたことがない(苦笑)。一応これはルネサンス期のパレストリーナを描いたものということで、かなり興味をそそられた(曲の引用とかあるのかと思ったけれど、ちょっとなさそうな感じ?)。圧巻なのは第一幕の終盤。かみさんを亡くして失意のパレストリーナがミサ曲を頼まれるも躊躇していると、霊感(天使たち)が舞い降りて作品が出来上がってしまう。そのあたりの音のうねり具合がなんともいいなあと。二幕目はトレント公会議の場面。紛糾するその会議の描き方もなかなか面白い。三幕目は、ミサ曲が大成功を収めた報が伝えられるパレストリーナなのだけれど、そこでの大写し(DVDならではですね)になるパレストリーナ(クリストファー・ヴェントリス)の微妙な表情がまたなんとも言えない余韻を残す……。成功したとはいえ、時代の変化の中になにやら取り残されつつあるという違和感のようなものが、浮かび上がっている感じ(?)。指揮はシモーネ・ヤング。序曲とか実に聴かせる。演出はクリスチャン・シュトゥックル。オーバーアマガウの受難劇なども手がける演出家とのこと。ある意味奇妙な、悪夢のような舞台でもある。