「人間の視点」がバイアスになるとき
竹内剛『武器をもたないチョウの戦い方——ライバルの見えない世界で』(京都大学学術出版会、2021)を読了しました。チョウの研究者の体験記をまとめたものですが、これがめっぽう面白いです。著者はチョウの専門家で、一般に縄張り行動として理解されているチョウの雄同士の飛翔行為が、もしかするとそういうものではまったくないのでは、という新しい説を唱えています。その説にいたる経緯や、そこから後の学界での認知をめぐる闘いなど、研究者としての半生を振り返る感じですね。
「人間の視点」で物事を考える姿勢がバイアスになって、真実が見えなくなっているのではないかという指摘が、とても印象的です。