エミール・ブートルーを読んでみる

偶然・必然から見た世界の階層性


 ベルクソンやデュルケムなどの師だったエミール・ブートルー。その博士論文で主要著書でもあった『自然法則の偶然性について』(De la contingence des lois de la Nature, 1874)を、kindleで出ていたデジタル版で読んでみました(途中、飛ばし読み。苦笑)。

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(↑いま手に入りやすいkindle版はこちらです)

 全盛だったコント流の実証主義の影響なのか、ブートルーは世界の構造を階層性として捉えています。そして階層の全体を、必然性・偶然性のグラデーションとして解釈します。低い階層ほど(たとえば無機物など)なにがしかの自然法則・数学的法則に支配され、高い階層にいたるほど偶然性に左右されると説くのですね。

 で、数学や物理など、諸学が前者の自然法則を扱うとするなら、実証的な学問(実証哲学でしょうか?)こそが、偶然性にかかわる後者を対象に据えうるのである、と考えています。偶然性を扱うその学問は、現象の観察や実験からの推論というかたちの方法論を取ります。推論である限りにおいて、そこには形而上学も含まれ、さらには神についての学知にも到達できるとされています。このあたり、階層性で考えているとはいえ、コントの三段階法則(学知は神学→形而上学→科学と進んでいくといった考え方)とはだいぶ異なっている印象ですね。