「権力」再定義?

試みとしては面白いが……


 今週日曜、衆院選の速報を聞きながら、次の本の最後のあたりを読んでいました。kindle unlimitedに入っていた仏語本です(ときに意外なものが入っていたりするのですねえ)。ジャン=クロード・マルタン『権力:その形態と関係の独特な性質』(Jean-Claude Martin, "LE POUVOIR: La nature unique de ses formes et rapports- Réponses à H. ARENDT et M. FOUCAULT (French Edition)" (A contre-pied, 2016))。著者はトゥールーズ・ポール=サバティエ大学の名誉教授とか。教育学・政治学が専門のようです。

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 肝となるのは、「権力」の再定義です。世の中には様々な「権力」があるわけですが、その厳密な定義というのは、これまでどこか曖昧で、きっちりしたものではなかったように思われます。著者は、世に存在する権力全般に共通する特徴として、「情報とエネルギーの二重項(doublet)」を持ち出してきます。これはつまり、情報が潜在的なエネルギーを発動させる鍵となっているような関係性を言うようです。

 その定義でもって、具体的なもろもろの権力的場面を描き直そうというのが、同書の野心的な目標になっています。

 うーん。情報とエネルギーというと、確かにちょっと現代的な定義な感じがしますが、でも今度は「情報」「エネルギー」の定義がまたもや曖昧になってしまいます。どこまでいっても、厳密な定義というものには、なかなかたどり着かないような……。「もやもやが残る」、これぞまさに、今回の衆院選の結果と同じですね(笑)。