ピランデッロ

メタ志向の萌芽


 これまたKindle Unlimitedの対象作品から、ルイージ・ピランデッロ『月を見つけたチャウラ』(関口英子訳、光文社古典新訳文庫、2012)を読んでみました。ピランデッロはシチリア出身の20世紀初頭の劇作家で、戯曲『登場人物を探す六人の登場人物』が知られていますが、短編もなかなかの名手だったのですね。

 その戯曲も未読ですし、残念ながら上演を観たこともありませんが、この文庫に収録されているなかにも、登場人物が作家に文句を言う一編があります(「登場人物の悲劇」)。「紙の世界」などもそうですが、総じてピランデッロの作品には、作品世界を独立した一つの別世界と割り切っている感じが濃厚にします。その意味では、登場人物が作者に話しかけてくるという一種のメタ小説、メタ戯曲のようなものも、技巧に走っているというよりは、ごく自然に作品世界の中に芽生えた、雑然としたメタ志向のような印象を受け、なかなか味わい深いものが感じられます。

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