自由意志問題……

古くからの問題、偽の問題?


 去年の『現代思想』8月号(青土社)に眼を通してみました。特集は「自由意志」。自由意志はあるのか、決定論とは両立できるのか、決定論と運命論との違いは……などなど、古くからある問題を、改めて取り上げているのは、そういう関連の書籍が近年数多く出版されているからのようです。

 科学のほうから発せられる決定論の猛威に、哲学がなんとか自由意志を擁護したがっているという構図、というところなんですが、両者がかみ合わないのは、自由意志や決定論といった概念の定義が大雑把すぎる点によるところが大きいように思われます。だから人によっては(とくに科学者の側?)あまり正面切ってそのあたりに関わり合いたくないのかもしれません。この号でも、なにやら編集部からの依頼原稿だということを強調している(つまり、あまり積極的には参与したくない?)論者が目立ちます(笑)。

 自由意志vs決定論は、まずはその大雑把な概念を細かく切り分けるところから始めないといけないわけで、それを提唱する論考もいくつか見られますが、現代的な文脈ではある程度緻密にやろうとすると、決定論側のなんらかのセオリーが優位に立ちやすい感じもします。個人的にはそんな合戦に与するよりも、たとえば近藤智彦氏の「自己原因と無原因の間——エピクロスからアフロディシアスのアレクサンドロスまで」のような、思想史的な論考のほうがはるかに面白く感じられます。そういう論考ばかりで一冊作ってもらいたいほどですね。

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