ミルの自由論

「今の話?」と思えるほどに


 古典を改めて読み直すシリーズ(勝手にやっていますが)。今回はやはりkindle unlimitedで、ジョン・ステュアート・ミルの『自由論』(光文社古典新訳文庫、斉藤悦則訳、2012)を読んでみました。

 ミルの自由論は、社会的に自由が制限されうるのはどんなときか、ということを考える、まさに基本・根幹の自由論です。他人の自由に抵触する場合のみ、というのが最初から示されます。穏健?いえいえ、結構とんがっていると思いますよ。変わった人がたくさんいないと、社会は活性化しない。だから皆さん、変わった人になりましょう、というのですからね!

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 原書は1859年刊。当時の世相を反映して書かれたものですが、権力の横暴の話など、なんだか「今と一緒じゃん」と思えるほど、身につまされる話が続きます。逆にいうと、世界が変わっていないことがしみじみとわかり、愕然とします。

 同書の最大の魅力は、そのなめらかでナチュラルな訳文にあります。巻末の訳者あとがきには、その訳出作業が「一行ごとに幸せ」に満ちていたこのだったことが述べられています。それはそのまま読者にも感じられます。生きる希望のための書をもう一度、という感じです。すばらしい。