電柱鳥類学

電線に止まる鳥たち


 kindle unlimited入りの岩波科学ライブラリー、科学的な研究の要を、一般向けに手堅くまとめている感じで、なかなか良書がそろっている印象です。短時間で読み切れる分量なのも好印象ですね。若い人向けなのでしょうけれど、老いてからも楽しいです。

 というわけで、タイトルにつられて『電柱鳥類学』(三上修、2020)を読んでみました。

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 電線に止まる鳥たちの生態についての本ではあるのですが、その前提となる電柱や電線についての基礎知識がまとめてあって、なるほどと思うところしきりでした。日本で最初の電柱ができてから、まだ140年しかたっていない(コンクリ製のものは100年)のだそうですが、そこに鳥が巣をかけたり眠ったりするのも、動物的な営為のスパンで見ればごく短い期間でしかない、というのも改めて興味深いことです。今後電線の地中化とかが進めば、もうそれだけで鳥の行動もまた変化していくだろうというわけで、この電柱・電線と鳥の結びつきも、歴史的に限定された、きわめて貴重なものなのかも、という著者の思いに心打たれます。

 それにしてもやはり動物を扱う本は、その行動様式などのディテールが魅力的ですね。余談ですけれど、kindle unlimitedに上巻しか入っていない、ダーウィンの『種の起源』(渡辺政隆訳、光文社古典新訳文庫、2009)も、理論的・推論的な言及よりも、様々に紹介されるそれぞれの種の特徴・特性への言及が、とても興味深いです。ダーウィンの博識ぶりの一端を、味わう感じですね。

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