ビザンツ再評価

Ch.バーバー&D. ジェンキンズ編『「ニコマコス倫理学」の中世ギリシア注解書』(“Medieval Greek Commentaries on the Nicomachean Ethics”, ed. Ch, Barber & D. Jenkins, Brill, 2009)を読み始める。中世ギリシア語圏での『ニコマコス倫理学』の注解書がどんな感じなのか、ちょっと興味が湧いての購入。まだ、事実上のイントロダクションという感じのアンソニー・カルデリスの最初の論文「12世紀ビザンツの古典学」をざざっと眺めただけで、『ニコマコス倫理学』の問題には入っていないのだけれど(苦笑)、うーむ、すでにして、やはりビザンツは中世思想史においても巨大な空隙だったのだなあ、ということを改めて感じさせられる。この論集自体もそうだけれど、西欧では今やあちらこちらでビザンツ世界の再評価が始まっている感じなのかも。同論文、西欧が古代ギリシアの文献に向ける視線の在り方は、実はビザンツの学者が大枠を定めてしまっていたことなどを指摘し、また12世紀ごろのビザンツの学者たちが、イデオロギー的にも環境的にも(辞書や文法書の整備など)、古来の文献の精査に十分なだけの準備ができていたことを論じている。うーん、出てくる名前とかも、プセロスなどの有名どころ以外は初めて聞く名が多い。これは気を引き締めて臨むことにしないと(笑)。