『驚きの化学(Étonnante chimie)』

応用化学の一般向け解説本!


 Claire-Marie Pradierほか編『Étonnante Chimie – Découvertes et promesse du XXIe siècle』 (CNRS Editions, 2021)を読んでみました。応用化学の前線で活躍する研究者たちが、それぞれ入門的な概説を寄稿した、一般向けの入門書もしくは教科書ですね。

 領域横断という意味で、これは素人目にはとても刺激的な本に仕上がっています。化学は現代人にとってはなくてはならない重要な学問ですが、その応用範囲の広がりは、宇宙生物学から絵画修復、考古学、植物学、海洋学、気象学、エネルギー関連分野、電子工学、分子工学、素材学、医療分野、科学捜査などなど、実に多岐にわたるというか、ほとんど漏れている分野などないかのようです。そのそれぞれについて、いかに化学が貢献し刷新をもたらしているかが語られていきます。高校生くらいなら、こういうのを読んで、そうした道に進みたいと思う人がきっといるでしょうね。フランク・ハーバート『デューン(砂の惑星)』に出てくる「スパイス」というドラッグの話なども取り上げています。

 ところどころに差し挟まれる、少し変わった偉人たちの紹介も面白いです。ラヴォワジエの妻マリー=アンヌ・ポールズから始まって、化学専攻だった作曲家ボロディン、ドイツのメルケル首相(物理学者として紹介されることが多いですが、博士論文は量子化学の分野のものだったとか)、マリー・キュリーの娘イレーヌ・キュリー、化学者でもあった作家のプリーモ・レーヴィなどなど、どれも興味深い案内ばかりです。

https://amzn.to/3Pep4mB