計算が遍在する時代

現代に投げかける視座


 森田真生『計算する生命』(新潮社、2021)を読んでみました。タイトルから「生物学系の本?」とか連想していましたが、数学史の本でした。でも、数学史を貫く哲学的考察をも踏まえた、実に興味深い本です。最初のほうで取り上げられている、虚数やリーマン面の簡潔な説明はとてもわかりやすいものでしたし、操作と理解、あるいは分析と総合といったアプローチが、それぞれ両輪として、相互に関係しながらどう展開していったのか、あるいはこれからどう展開していくのがよいのか、といったあたりの問題が、一番の読みどころという感じです。

 カントやフレーゲ、ウィトゲンシュタインなど、哲学サイドへの言及もしっかりあって、数学史の醍醐味を、哲学との絡みなども含めて多角的に取り上げている点も、とても好感がもてる一冊です。

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